競輪の「1番人気」とは、
何なのか
オッズ画面を初めて開いた人が、まず探すのが「1番人気」の欄だ。一番人気があるのだから、一番よく来る組なのだろう ── そう思って買い、そして外れる。大波乱と呼ばれる決着は、決して珍しくない。競輪の人気は、当たりを示す印ではなく、市場が下した見立てにすぎない。
競輪の3連単で、的中組の中に1番人気が含まれたレースは、男子7車立てで13.61%。残りの86.4%のレースは、別の組が来ている。
- 主要数値 ── 1番人気の的中率は3連単13.61%/3連複26.79%/2車単26.82%/2車複38.63%。3連単の的中組のうち最も人気が高かった組は中央値11番人気。
- 期間・母数 ── 2021年6月22日〜2026年8月29日、105,810レース(2026年8月29日時点の集計)。
- 定義 ── 「人気」は公式の払戻表に併記される確定人気順位(発売締切時のオッズによる順位)。的中率は、的中組の中に1番人気が含まれたレースの割合(的中組が複数あるレースは、最も人気が高かった組の人気順位で判定)。
- 除外条件 ── 中止・未確定レース。主要数値は男子・7車立てに限定した。車立て別の比較でのみ7車立て以外も対象とし、ガールズ競輪はよくある質問で別集計として示す。3連単の払戻が記録されていない351レース(0.33%)も分母から外した。
- 最終確認日 ── 2026年8月29日。
- 限界 ── 13.61%は男子7車立ての値。ガールズ競輪と全車立てを含めた全レースの参考値は13.51%(140,865レース)。人気順位は発売締切時点のオッズによるもので、レース中の展開は反映していない。回収率・買い目の有利不利は扱っていない。
なぜ1番人気なのに、13.61%しか当たらないのか
3連単は7車立て(1レースに7人が出走する、競輪でいちばん多い形)で210通りあり、その1つを着順どおりに名指しする券種だからだ。男子7車立ての1番人気は13.61%、残る86.4%は別の組が来ている。それでもこの13.61%は、210通りから当てずっぽうに1点選んだ場合の0.48%の28.6倍にあたる(確率どうしの比であり、配当の倍率ではない)。人気が当てにならないのではなく、当てにしてもなお外れるほど3連単の目が細かい、ということだ。
そもそも競輪の「人気」とは何か
人気順位とは、発売が締め切られた時点のオッズ ── その組がどれだけ買われたかの順番だ。1番人気は「最も多く支持された組」であって、「最も来やすいと保証された組」ではない。競輪には単勝がなく、人気は券種ごとに別々に付くため、同じレースでも2車複の1番人気と3連単の1番人気では、指している組の細かさがまるで違う。
データで見る、券種ごとに1番人気は何%来るのか
着順まで指定する券種ほど、1番人気は当たらなくなる。1着と2着を順不同で当てる2車複の38.63%から、1〜3着を順番どおりに当てる3連単の13.61%まで、同じ「1番人気」でも当たる率は2.8倍開く。2車単は1・2着を順番どおり、3連複は1〜3着を順不同に当てる券種だ。このほかワイドや枠を当てる券種もあるが、ここでは的中する組が1つに定まる4種類を比べる。
面白いのは2車単26.82%と3連複26.79%だ。買う組み合わせは42通りと35通りで違うのに、この差は統計的に区別できなかった。つまり券種の当たりにくさは、点数の順番どおりには並ばない。
なお、レースで最も支持を集めた"選手"がライン先頭か番手かで1着率が変わることは、検証ラボ #23「同じ『人気1位』でも、中身は違う」で扱っている。ただし#23はオッズから作った疑似的な人気を選手単位で見たもので(2026年7月3日〜8月17日が対象)、本稿の払戻表由来・組単位の人気順位とは別の指標だ。直接は比べられない。
的中組のうち最も人気が高かった組は、何番人気なのか
的中組のうち最も人気が高かった組の人気順位で見ると、半分弱にあたる49.72%は10番人気以内に収まり、中央値は11番人気。だが16.81% ── 6回に1回 ── は、50番人気より人気の無い組が来ている。
半分弱は10番人気以内という手の届く範囲で決まり、残りの半分強は、そこから210番人気まで広く散らばっている。しかもこの13.61%は単年のブレではなく、2021年から2026年まで、どの年も12.5〜14.1%の範囲に収まっている(2021年は6月22日から、2026年は集計終端までの部分年)。
車立てが少ないほど、1番人気は来やすいのか
5車22.90%、6車15.56%、7車13.61%。出走数が少ないほど1番人気は来やすく、この順序はF1・F2(日常的に開催される格付け)それぞれの中で分けて見ても変わらない。
ただし、この階段は9車立てまでは延ばせない。9車立ては8.91%とさらに低いが、9車立てはほぼ全て(98.95%)がG3以上(賞金も選手の格も上のシリーズ)で、7車立てはほぼ全て(99.52%)が日常的に行われるF1・F2だ。車の数だけでなく選手層ごと入れ替わっている。唯一比較できるG3どうしに絞ると差は1.83ポイントだが、G3の7車立ては482レースしかなく、この母数では差の有無を判定できない。「差が無い」のではなく「車の数だけの効果かどうかを確かめられない」というのが正確なところだ。車立てとラインの関係は検証ラボ #24「車立てが増えると、ラインの効き目は薄まる」にある。
だから予想は、「1番人気かどうか」だけでは終わらない。人気は市場の見立てを1本の順位に圧縮した数字だ。均等に1組を選ぶ基準0.48%に対し、実測は13.61%だった。割合の比は28.6倍だが、この比だけで車立て別の人気情報の予測力を比較することはできない。順位そのものを疑うのではなく、その並びがレースの形と噛み合っているかどうかを重ねて読む必要がある。
KEIRINCRAFTでは、これをどう使うか
KEIRINCRAFTで調整できるのは「ライン信頼度」「脚質」「番手評価」といったレースの形そのものを決める要素に加えて、市場の人気をどれだけ織り込むかを決める「人気補正」まで含まれる。市場が出した1本の順位をそのまま受け取るか、自分の重み付けでレースを並べ直すか ── その配分を指先で決められるのが、つまみの役割だ。そのレースがどれだけ読みやすいかは自信度メーター(テトラ度)で確認できる。TETRA内部の特徴量・重み付け・処理手順は非公開。
よくある質問
男子7車立てでは、的中組の中に1番人気が含まれたレースが13.61%です(2021年6月22日〜2026年8月29日、105,810レース)。残る86.4%は1番人気以外の組が来ています。券種を変えると、3連複26.79%、2車単26.82%、2車複38.63%になります。
発売が締め切られた時点のオッズに基づく順位で、公式の払戻表に併記されます。その組がどれだけ買われたかの順番であり、予想印とは別のものです。競輪に単勝はなく、人気は券種ごとに別々に付きます。
男子7車立てでは、的中組のうち最も人気が高かった組の人気順位は中央値が11番人気で、10番人気以内が半分弱(49.72%)です。一方で16.81%は50番人気より人気の無い組が来ており、平均は26.07番人気まで下がります。
この設問のみガールズ競輪を対象に別集計しました。ガールズ競輪の7車立ては13.63%(9,586レース)で、男子7車立ての13.61%との差は誤差の範囲でした。男女で違うとは言えません。なお本稿の主集計は男子のみで、この数値は比較のための参考値です。
出典・再現性
- データ ── KEIRINCRAFTデータベース。人気順位は公式の確定払戻表に併記された「(n)」を取り込んだもので、発売締切時のオッズによる順位。アプリの予想印とは無関係。
- 期間・基準日 ── 2021年6月22日〜2026年8月29日。集計は2026年8月29日に実行した。最終日ぶんは取り込みが進行中のため、後日同じ条件で再集計すると母数はわずかに増える。
- 主母集団 ── 男子・7車立て・確定レース。該当する106,161レースのうち、3連単の払戻が記録されている105,810レース(99.67%)を分母とした。残る351レース(0.33%)は払戻データが無い。年ごとの欠測率には0.15%(2023年)〜0.80%(2022年)の幅がある。欠測率は全体で0.33%。割合は小さいが、欠測理由が無作為とは確認できていないため、影響を完全には否定できない。
- 補助集計 ── 車立て別の比較だけは車立てを限定せずに分割した。ガールズ競輪はよくある質問でのみ別集計として示した。
- 集計方法 ── レース単位で集計。1レースに的中組が複数あるレース(790件・0.75%)を二重に数えないよう、レースごとに的中組の人気順位の最小値をとり、それが1位かどうかで判定した。この取り方は的中率をわずかに高い側へ寄せる。
- 除外 ── 中止・未確定レース。ワイドは1レースに的中組が3つあり「1番人気の的中率」の定義が二つに割れるため、券種の比較から外した。
- 券種別の母数 ── 2車複・2車単=105,823/3連複・3連単=105,810。
- 車立て別の母数 ── 5車=2,542/6車=9,818/7車=105,810/8車=835/9車=11,460。8車立ての1番人気的中率は8.62%だが、8車立ては全てG3以上で7車立てと直接比較できず、9車立てとの差も誤差の範囲だったため図から外した。
- 9車立てのグレード内訳 ── G3 8,808/G1 1,740/G2 650/GP 142/F2 120(合計11,460。G3以上が11,340=98.95%)。7車立てはF2 62,374/F1 42,930/G3 482/G1 15/G2 5/GP 4(合計105,810。F1・F2が105,304=99.52%)。
- 基準線 ── 7車立ての組み合わせ総数は2車複21・2車単42・3連複35・3連単210通り。等確率ならそれぞれ4.76%・2.38%・2.86%・0.48%。5車立ての3連単は60通り(1.67%)、6車立ては120通り(0.83%)。
- 券種名 ── データベース内部では当該券種を「2車連」というラベルで保持しているが、公式表記は「2車複」であり、本文は公式表記に統一した。
- 統計の扱い ── 「区別できなかった」と書いた比較(2車単と3連複、G3内の7車と9車、男子とガールズ)は、差が誤差で説明できる範囲だったもの。このうち2車単と3連複は同一レース群での対応のある比較のため、両券種とも払戻が記録されている同一レースを対象にMcNemar検定で確認した(データ基準日2026年8月29日、p=0.84)。断定した比較は、いずれも差が誤差では説明できないことを確認している。回収率・買い目の有利不利は扱っていない。
- 最終確認日 ── 2026年8月29日。
著者・制作方法
- 著者 ── 有田 光志(KEIRINCRAFT開発者/CRAFT LAB GROUP)。
- 制作方法 ── 本文の集計値(結論ブロック・各図・よくある質問・出典パネル)は、公式の確定払戻表から取り込んだKEIRINCRAFTデータベースに直接SQLを実行した結果だけを使っている。推定値・他所からの引用値は用いていない。集計は上記「出典・再現性」の条件で再集計できる(基準日より後に確定したレースが加わるため、母数は基準日の値より増える)。
- 更新方針 ── 数値は基準日時点のもの。再集計した際は基準日とあわせて更新する。
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集計データはKEIRINCRAFTデータベース。主要な集計は、2021年以降の男子・7車立て・確定レース(ガールズ競輪を除く)を対象にしています。数字は過去の傾向であり、将来の結果や的中を保証するものではありません。
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