— TL;DR —

2 連率 = 1 着または 2 着に入る率。3 連率 = 1 着または 2 着または 3 着に入る率。 そして 「複勝率」 は媒体によって 2 連率を指すことも 3 連率を指すこともある曖昧な言葉です。 舟券種別 (2 連単/3 連単/3 連複) によって見るべき指標は違います。BOATCRAFT は内部で top2_rate / top3_rate と明示分離し、混乱の余地を消しています。

この記事では「複勝率って結局どっちなの?」「2 連率と 3 連率の使い分けが分からない」という方のために、以下の内容をまとめています。

第 1 回「AI予想とは何か」で触れた選手評価の話、 第 2 回「4モデルブレンドの設計思想」で出てきた特徴量の話を、 もう一歩実用寄りに掘り下げた回です。

— Key Message —
複勝率」と聞いたら、まず 「それは 2 連率? 3 連率?」 を確認する。これが選手評価の出発点です。
I.

なぜこの 3 つを混同するのか

競艇を始めて最初の壁が、選手データの読み方です。出走表を開くと 「勝率」「2 連率」「3 連率」 が並んでいる。 ところが解説記事を読みに行くと、今度は「複勝率」という別の単語が出てくる。これが混乱の入口です。

公式と一般メディアの呼び方が違う

boatrace.jp の公式出走表 は「2 連率」「3 連率」と表記します。一方で一般の予想記事やまとめサイトは 「複勝率」「連対率」といった呼び方を混在させがちです。意味が同じならまだしも、「複勝率 = 2 連率」と書く媒体「複勝率 = 3 連率」と書く媒体 が両方存在するのが厄介な点です。

競馬用語の流入

競馬では「複勝」が「3 着以内」を指す舟券 (馬券) 種類として確立しているため、競馬畑の書き手が競艇記事を書くと 「複勝率 = 3 着以内に入る率 = 3 連率」 と書くことが多くなります。 逆に競艇プロパーの書き手は 「複勝率 = 2 連率」 として扱う場面もあり、結果として読み手は文脈で判断を迫られます。

「連対率」も曖昧

「連対率」も同じ問題を抱えています。本来「連対」は 2 着以内 を指す競馬用語で、転用されると 2 連率と等価です。 ただし一部の媒体では 3 着以内まで含めて「連対」と表現することがあり、結局のところ 「率」という言葉だけでは数字の意味が定まらない のが現状です。

呼び方の標準が存在しない。
だから「どの率か」を毎回確認する習慣が要ります。
II.

3 つの指標の厳密な定義

混乱を避けるために、ここから先は boatrace.jp 公式 の表記基準に従って定義します。 「複勝率」という曖昧語は使わず、必ず「2 連率」「3 連率」のどちらかに展開します。

勝率 (1 着率)

出走数のうち 1 着になった割合。最も厳密で、最も達成しづらい指標です。 公式の「勝率」は単純な 1 着率ではなく 着順点に基づく加重平均 ですが、本記事では 議論を簡単にするため「勝率 ≒ 1 着率」として扱います。

2 連率 (連対率)

出走数のうち 1 着または 2 着に入った割合。つまり「1 着率 + 2 着率」と等価です。 2 連単 / 2 連複 の舟券を組み立てるときに最も直接効く指標です。

3 連率 (3 着内率)

出走数のうち 1 着または 2 着または 3 着に入った割合。「1 着率 + 2 着率 + 3 着率」と等価です。 3 連単 / 3 連複 の舟券で買い目を組むときに直接効きます。

「複勝率」の正体

ここで核心です。「複勝率」は媒体によって指す内容が変わる曖昧な言葉 で、boatrace.jp 公式の出走表では この語は採用されていません。実用上は次の 2 通りで解釈されます。

媒体タイプ 「複勝率」が指す数字 boatrace.jp 用語
競艇プロパー寄り 1 着 + 2 着の率 2 連率
競馬流入・一般紙寄り 1 着 + 2 着 + 3 着の率 3 連率
公式 (boatrace.jp) 該当語なし 2 連率 / 3 連率 と明示

解説記事で「複勝率 50% の選手」と書かれていたら、それは 2 連率 50% なのか 3 連率 50% なのかで 意味がまるで違います。前者なら超優秀、後者なら平均的、というレベルの差があります。

覚え方の図式

勝率   = P(1 着)
2 連率 = P(1 着) + P(2 着)
3 連率 = P(1 着) + P(2 着) + P(3 着)

複勝率 = ??? (媒体ごとに 2 連率 or 3 連率)

この図を脳裏に焼き付けておけば、「複勝率」という単語に遭遇したときに反射的に 「文脈はどっち?」 と確認できるようになります。

公式は 2 連率 / 3 連率 と明示する。
迷ったら公式表記に戻る。これが原則です。
III.

計算式と具体例

数字に落とすと一気にイメージが湧きます。架空の選手 X が直近 30 走で次の成績を残したとしましょう。

着順 回数 30 走に対する割合
1 着 10 回 33.3%
2 着 8 回 26.7%
3 着 6 回 20.0%
4 着以下 6 回 20.0%

この選手 X の各指標を計算するとこうなります。

指標 計算式 結果
勝率 (1 着率) 10 / 30 33.3%
2 連率 (10 + 8) / 30 60.0%
3 連率 (10 + 8 + 6) / 30 80.0%

同じ選手なのに、見る指標が変わると 33.3% / 60.0% / 80.0% と数字の印象がまるで違うのが分かります。 ここで「この選手は複勝率 80% です」と書かれていれば、それは 3 連率の話。 「複勝率 60% です」と書かれていれば、それは 2 連率の話。 同じ「複勝率」という単語で、20 ポイントの差 が発生する余地があるわけです。

業界水準のざっくり目安

主要級別ごとの 2 連率 / 3 連率の典型的な範囲はおおよそ次の通りです (全国・全節通算)。

級別 勝率の典型 2 連率の典型 3 連率の典型
A1 6.5 - 8.0 45 - 55% 60 - 70%
A2 5.5 - 6.5 35 - 45% 50 - 60%
B1 4.5 - 5.5 25 - 35% 40 - 50%
B2 3.5 以下 15 - 25% 25 - 35%

この表を覚えておくと、選手データを見たときに「2 連率 40% の B1 選手 = 平均よりやや上」「3 連率 40% の B1 選手 = ほぼ平均」と 瞬時に位置づけ ができます。級別の詳細は 用語集 / 級別 も参照ください。

IV.

どの場面でどの指標を使うか

選手評価の基本は 「自分が買おうとしている舟券種類に対応した指標を見る」 ことです。 ここを取り違えると、見ている数字と買い目がチグハグになり予想が崩れます。

2 連単 / 2 連複 を組むとき → 2 連率を重視

2 連単 / 2 連複は 1-2 着の組み合わせ が当たる舟券です。3 着の情報は買い目に含まれません。 したがって、軸選手・相手選手を絞るときは 2 連率 が最も直接的な指標になります。 3 連率を見ても良いのですが、3 着までの情報が混ざる分だけ「2 着以内に来る力」を測る精度は落ちます。

3 連単 / 3 連複 を組むとき → 3 連率を重視

3 連単 / 3 連複は 3 着までの組み合わせ が問われる舟券です。3 着でも当たれば配当が発生する以上、 3 着まで含めた評価指標である 3 連率 を見るのが理にかなっています。 特に 3 連複 BOX3 連単フォーメーション のように手広く買う買い目を組むときは、 3 連率の高い艇を組み込むことで的中の安定性が増します。

「1 コースの 1 着率」を会場特性で見るとき → 勝率 (1 着率)

会場ごとに「1 コースが何 % 1 着になるか」を比較するときは、純粋な 1 着率 (勝率) を使います。 2 連率や 3 連率を使うと「1 コースの選手が 2 着 / 3 着に流れた率」も混ざってしまい、 会場固有の 1 コース優位性 を測れません。会場別の 1 コース勝率は 会場ガイド および 用語集 / 1 コース 1 着率 で個別に確認できます。

軸選手を絞るとき → 「2 連率と 3 連率の差」も見る

実は 「3 連率 − 2 連率」 という値も参考になります。これは 3 着になる率 に相当する数字で、 この値が極端に大きい選手は「2 着には入れないが 3 着には粘り込む」タイプ、 逆に値が小さい選手は「2 着以内か 4 着以下しかない、極端な選手」というプロファイリングができます。 3 連単で 3 着付け候補を探す ときに地味に効く視点です。

超優秀ラインの目安

指標 「優秀」ライン 「超優秀」ライン
勝率 (加重) 6.5 以上 8.0 以上
2 連率 35% 以上 40% 超
3 連率 45% 以上 50% 超
買う舟券種類と見る指標は一対一で対応している。
ここを揃えるだけで予想の見え方が変わります。
V.

BOATCRAFT モデルでの扱い

BOATCRAFT の予測エンジンは、第 2 回で解説した 4 つの機械学習モデル (LightGBM / XGBoost / CatBoost / NN) と、 第 3 回で解説した 統計モデル (ベイズ + 階層モデル + ロジスティック回帰) を組み合わせるハイブリッド構成です。 これら 5 種類のモデルすべてで、勝率 / 2 連率 / 3 連率は別個の特徴量 として学習に使われています。

内部命名の明示分離

BOATCRAFT 内部のコードでは、「複勝率」という曖昧語は 一切使いません。代わりに次のように厳密に命名します。

BOATCRAFT 内部の名称 意味 boatrace.jp 用語
win_rate 1 着率 勝率
top2_rate 1 着 + 2 着の率 2 連率
top3_rate 1 着 + 2 着 + 3 着の率 3 連率

この命名規約のおかげで、開発時に 「あれ、ここって 2 連率と 3 連率どっち想定だっけ」 と迷う事故が起きません。 アプリ UI 側の表示も同じ規約で揃えており、ユーザーが見る画面に「複勝率」という曖昧表記は出てきません。

つまみによる重み付けの自由度

Standard / Pro プランで開放される追加つまみの中には、2 連率重視 / 3 連率重視 を切り替える設計があります。 2 連単中心に買う方は 2 連率の重みを上げ、3 連単中心の方は 3 連率の重みを上げる、という直感的な操作が可能です。 用語の対応は 用語集 / 2 連率 および 用語集 / 3 連率 でいつでも参照できます。

— Design Philosophy —
曖昧語を内部から排除することで、モデル学習の事故と UI の誤解を同時に防ぐ。命名規約は実装品質の土台 という思想です。
VI.

よくある間違い 5 つ

指標の使い分けでつまずきがちなパターンを 5 つ整理しました。1 つでも心当たりがある場合は、評価の前提を見直す価値があります。

— Mistake 01 —
「複勝率 80% だから 1 着になる確率 80%」
これは典型的な取り違えです。複勝率が指しているのは 3 着以内に入る確率 (媒体によっては 2 着以内) であって、 1 着になる確率ではありません。1 着になる確率を見たいときは 勝率 (1 着率) を確認します。 80% の複勝率と聞いて「ほぼ確実に勝つ選手」と誤解すると、頭付けで手厚く買って外す事故が起こりやすくなります。
— Mistake 02 —
2 連率と 3 連率を直接比較してしまう
「選手 A は 2 連率 45%、選手 B は 3 連率 55% だから B のほうが上」── これは 定義の違う 2 つの数字を比較 しているので不成立です。 3 連率は 2 連率より構造的に高くなる (3 着まで含むため) ので、同じ土俵で並べることはできません。 比較するなら 同じ指標どうし (2 連率 vs 2 連率、3 連率 vs 3 連率) で並べる必要があります。
— Mistake 03 —
「A1 級なら全選手 2 連率 40% 超」と信じ込む
A1 級は半期ごとの上位約 2 割の選手に与えられる級別ですが、級が確定した時点の数字その後の不振 の間に タイムラグがあります。級が A1 でも、節跨ぎや会場相性が悪い時期には 2 連率が 30 % 台に落ち込むケースは普通にあります。 級だけで決め打ちせず、当地 2 連率 / 直近の節成績 も合わせて確認するのが安全策です。
— Mistake 04 —
「当地 3 連率は全国 3 連率と必ず近い」と思い込む
会場ごとに水面の特徴 (流れ・うねり・1 マークの広さ) が違うため、当地 3 連率は全国 3 連率と大きく乖離 することがあります。 全国 3 連率 50% でも、特定会場での当地 3 連率が 30 % 台、という選手は珍しくありません。 全国の数字を「実力の地金」、当地の数字を「会場との相性」と分けて読むのがコツです。 全国勝率 / 当地勝率の使い分けは 用語集 / 全国勝率用語集 / 当地勝率 にまとめています。
— Mistake 05 —
直近 30 走の 2 連率を年間値と同じものとして扱う
直近 30 走の数字は 短期サンプル なのでぶれが大きく、たまたま不調 / 好調期に重なると実力以上 / 以下の値が出ます。 逆に半期 (約 6 か月) のデータは安定する代わりに、現在のコンディションが反映されきっていない という弱点があります。 どちらか片方ではなく、「半期 + 直近 10 走 + 今節成績」 を併用して時間スケール違いの情報を組み合わせるのが王道です。
指標の意味と限界を理解した上で使う。
これが選手評価の最低条件です。
VII.

まとめ

長くなりましたが、ポイントを 5 つに整理します。

  1. 「複勝率」は曖昧語。媒体によって 2 連率を指すか 3 連率を指すかが違うので、必ず文脈で確認する。
  2. boatrace.jp 公式の表記基準 に従い、勝率 / 2 連率 / 3 連率 の 3 つで会話するのが最も誤解が少ない。
  3. 舟券種別と指標は一対一。2 連単/2 連複なら 2 連率、3 連単/3 連複なら 3 連率を主軸に見る。
  4. 級別だけで決め打ちしない。当地成績・直近 10 走・今節成績を組み合わせ、時間スケール違いを併用する。
  5. BOATCRAFT は内部で win_rate / top2_rate / top3_rate を明示分離。UI も含めて曖昧語を排除している。

指標を正しく使い分けるだけで、同じ出走表でも見える景色が大きく変わります。次回コラム以降では、 23 つまみの設計思想 および 当地 / 全国データの組み合わせ方 を順に解説していく予定です。

— About the Author —
有田 光志

craft シリーズ制作。競艇予想 AI「BOATCRAFT」を個人開発しています。

指標の命名規約は、地味に見えてモデル精度に直結する部分です。 BOATCRAFT 内部で win_rate / top2_rate / top3_rate と分けたことで、 特徴量を取り違えるバグ がゼロになり、開発のテンポが目に見えて改善しました。 ユーザーから見える UI 表記も同じ規約で統一しています。

→ 運営者について詳しく

指標を正しく使い分けて、予想の解像度を上げる

勝率・2 連率・3 連率。3 つの指標を明示分離して扱う BOATCRAFT なら、 舟券種別ごとに最適な選手評価を確認できます。曖昧語に振り回されない予想体験をどうぞ。

Free
¥0
10 つまみ
体験から始める
Standard
¥330 / 月
16 つまみ
予想保存 10 件
Pro
¥980 / 月
23 つまみ
最適化済プリセット
App Store で見る →