— この記事の要点 —

雨は荒れる」というファンの定説は、データの裏付けがない。直近 5 年・約 19.8 万レースで天気別 1 号艇勝率を集計したところ、晴 54.72% vs 雨 54.38% で統計的に差なし (z=1.03, p=0.30)。本当の犯人は 風速 で、晴の凪 (0-1m) は 59.16% だが強風 (6m+) では 46.72% まで激落ちする (-12.44 ポイント、z=25.59, p<0.0001)。この"風の効き方"は24会場で方向は共通だが強さは最大8倍差がある。意外なのは 雨の平均風速 2.38m で晴 2.95m より凪傾向 なこと。さらに強風 6m+ 時は 雨の方が 1 号艇勝率高い (50.00% vs 晴 46.72%) という逆転現象も統計的に確認 (z=-2.64, p=0.008)。

なぜ「雨は荒れる」と言われるのか

雨の日は荒れる」── 競艇予想の現場で繰り返し聞く言葉。理由として挙げられるのは:

これらは現場の感覚として理に適っている。ただし「本当に 1 号艇勝率が雨の日に下がっているのか?」は、実データで確かめないとわからない。今回、検証ラボ #03 (春夏秋冬) で使ったのと同じ手法で、天気別の 1 号艇勝率を直近 5 年データで比較した。

検証方法

検証手順:

  1. 期間: 2021-01-01 〜 2025-12-31 (直近 5 年)
  2. 対象: 全 24 場 × 1 号艇のレース約 14.9 万件 (天気記録ありのみ)
  3. 天気カテゴリ: 晴 / 雨 / 雪 の 3 種類 (BOATCRAFT データベース集計)
  4. 指標: 1 号艇 1 着率、各艇別勝率、平均風速、平均波高、水質クロス、風速段階別
  5. 統計テスト: 2 つの勝率を比べる方法 (z 検定)

※ 「曇」カテゴリは BOATCRAFT データベースでは「晴」に統合扱い (荒天判定基準の都合)。雪は冬の北陸/北関東で発生する稀ケース (全体の 0.6%)。

天気別 1 号艇勝率 ─ 晴 vs 雨 vs 雪

結果から見せる。直近 5 年・全国の天気別 1 号艇勝率は以下 (2026-07-08 再集計):

天気レース数1 号艇勝率
170,59654.72%
26,38754.38%
1,17452.30%
天気別の1号艇勝率の棒グラフ
図:天気別1号艇勝率。晴と雨はほぼ同じ(差0.34pt・p=0.30)で、雨そのものは効かない。

晴と雨の差はわずか 0.34 ポイント。「雨で荒れる」というファンの定説に反して、ほぼ同じ勝率が出ている。「100 レースに 1 レース」レベルの差で、競艇予想で判断に影響する水準とは言えない。

雪は -2.42 ポイントで少し低めだが、サンプル数が n=1,174 と少ない (全体の 0.6%) ため、後ほど統計検定で偶然か否か判定する。

統計メモ:晴(n=170,596)と雨(n=26,387)の1号艇勝率差(54.72%→54.38%)が偶然で生じる確率は30%(2標本比率検定でz≈1.03・p≈0.30)。統計的に「差なし」と判定される水準。

統計テストでも差なし確定 (偶然レベル)

「0.34 ポイントの差は偶然じゃないの?」── これに答えるのが統計テスト。2 つの勝率を比べる方法で計算した結果:

比較z値偶然で出る確率(p)判定
晴 vs 雨0.34 ポイント1.030.30差なし (偶然レベル)
晴 vs 雪2.42 ポイント1.660.10❌ 偶然レベル (n=1,174 でサンプル不足)
雨 vs 雪2.08 ポイント1.400.16❌ 偶然レベル

晴と雨で 1 号艇勝率に差はない」は統計的に確定した事実。「偶然でこの差が出る確率は 30%」=「10 回中 3 回はこの差が偶然でも出る」という意味で、とても「天気の効果」と呼べる水準ではない。

雨は荒れる」というファンの定説は、データの裏付けがない記憶バイアス。雨の日に荒れたレースだけ印象に残り、晴の日の荒れは「天気のせい」とラベル付けされなかった、というのが認知科学的な解釈。

I.天気 × 水質クロス

もう一歩掘り下げる。会場の 水質 (海水・淡水・汽水) で分けて、天気別の 1 号艇勝率を出すと、構造が見えてくる:

天気海水場 (10 場)淡水場 (9 場)汽水場 (5 場)
56.36%53.87%52.87%
55.42%54.47%52.21%
55.51%49.14% 💀55.05% (n=109)

注目すべきは 雪 × 淡水場の 49.14%。これは北関東 (桐生・戸田・多摩川) や北陸 (三国・びわこ) の冬の影響を強く反映している。雪の日は淡水場で 1 号艇が崩れやすいが、全体サンプル数が少なく (淡水雪 n=584)、確定的とは言えない。

晴 vs 雨を水質別に見ると、海水場での晴の優位 (56.36% vs 雨 55.42%、+0.94pt) が他の水質より大きい。海水場は穏やかな晴の日に最も「鏡面」になり、1 号艇のスタート差がそのまま着順に出る構造が考えられる。

本当の犯人は「風速」だった

「天気」が原因じゃないなら、何が荒れの真因か? 答えは 風速 だった。同じ天気カテゴリ内で風速段階別に 1 号艇勝率を分けると、明確な傾向が見える。

晴の日の風速段階別 1 号艇勝率

風速レース数1 号艇勝率
0-1m (凪)36,71259.16% 👑
2-3m (弱風)78,02855.74%
4-5m (中風)41,26551.67%
6m+ (強風)14,59146.72% 💀
風速別の1号艇勝率の棒グラフ
図:風速別1号艇勝率。凪59.16%→強風46.72%まで単調に12pt超減少。荒れの真因は雨ではなく風。

晴の日でも、凪 (0-1m) の 59.16% から強風 (6m+) の 46.72% まで 12.44 ポイントの落差。これは「春が 1 号艇最強」(検証ラボ #03 で 2.11 ポイント差) や「夏が弱い」(同 -1.15 ポイント) より遥かに大きい影響。風速こそが 1 号艇勝率を左右する第一要因。

統計メモ:晴の日、凪(n=36,712)と強風(n=14,591)の1号艇勝率差(59.16%→46.72%)が偶然で生じる確率は事実上ゼロ(2標本比率検定でz≈25.59・p<0.0001)。「春が1号艇最強」(検証ラボ#03・z値相当は本文参照)よりも遥かに強い信号。

雨の日の風速段階別 1 号艇勝率

風速レース数1 号艇勝率
0-1m (凪)10,13756.98%
2-3m (弱風)10,24054.23%
4-5m (中風)4,18850.33%
6m+ (強風)1,82250.00%

雨の日も同じく 風速が強くなるほど 1 号艇勝率が下がる傾向。凪 (56.98%) から中風 (50.33%) まで -6.65 ポイント (z≈5.52, p<0.0001)。

強風 (6m+) は 50.00% で中風とほぼ同水準 (-0.33 ポイント、ほぼ横ばい)。ここで注目したいのは 晴の強風 (46.72%) と比べると、雨の強風の方がむしろ高いという点。次セクションで掘り下げる「逆転現象」の入り口。

II.会場によって風の効き方は違うか

「風速が効く」は全国平均の話。この効き方は24会場すべてで同じように出るのか、晴の日の凪(0-1m)と強風(6m+)を会場別に集計して確認した。

会場凪 勝率(n)強風 勝率(n)
若松67.37% (2,075)49.68% (622)-17.69pt
下関67.37% (1,661)46.35% (192)-17.02pt
蒲郡63.45% (1,387)44.59% (148)-18.86pt
びわこ59.55% (1,617)42.95% (305)-16.60pt
児島62.63% (867)44.90% (314)-17.73pt
芦屋64.77% (1,601)50.84% (358)-13.93pt
丸亀62.75% (1,839)51.93% (595)-10.82pt
桐生57.07% (1,887)45.08% (1,016)-11.99pt
徳山68.23% (1,470)55.76% (321)-12.47pt
大村66.07% (2,803)54.72% (265)-11.35pt
尼崎58.90% (1,039)52.72% (956)-6.18pt
鳴門51.76% (1,509)43.41% (963)-8.35pt
三国56.72% (1,012)49.15% (706)-7.57pt
多摩川52.24% (1,878)48.72% (312)-3.52pt
平和島48.27% (1,533)44.73% (693)-3.54pt
戸田43.72% (3,088)41.60% (827)-2.12pt
福岡58.42% (558)60.34% (174)+1.92pt

※ 上記は差の大きい順・小さい順に抜粋 (全24場中17場を掲載)。江戸川・住之江は凪または強風のサンプルが少なく (n<250) 表から除外。

統計メモ:24会場中23場が「凪→強風で1号艇勝率が下がる」という同じ方向を示す。差の大きさは蒲郡の-18.86ptから戸田の-2.12ptまで約9倍のばらつきがあり、風速の効き方は会場の水面構造によって大きく変わる。唯一の例外は福岡(+1.92pt)だが、強風サンプルがn=174とやや小さく、確定的な逆転とは言い切れない。

徳山・大村(海水場)や若松・下関でも風は効くが、戸田・平和島・多摩川のような都市部近郊の淡水場では風の影響が相対的に小さい。会場ごとの水面の広さ・地形による風の抜け方の違いが背景にあると考えられる。

逆転現象: 強風時は雨の方が固い

同じ風速バンドで晴 vs 雨を比較すると、面白いパターンが見える:

風速晴 1 号艇勝率雨 1 号艇勝率差 (雨-晴)
0-1m (凪)59.16%56.98%-2.18 ポイント
2-3m (弱風)55.74%54.23%-1.51 ポイント
4-5m (中風)51.67%50.33%-1.34 ポイント
6m+ (強風)46.72%50.00%+3.28 ポイント ⬆️

弱風 〜 中風 (0-5m) では晴の方が 1 号艇勝率が高い (1-2 ポイント差) が、強風 (6m+) では雨の方が 3.28 ポイント高いという逆転現象。

統計メモ:強風時の晴(n=14,591)と雨(n=1,822)の差(46.72%→50.00%)は偶然では説明しにくい水準(z≈-2.64・p≈0.008)。逆転そのものは統計的にも支持される。

仮説

  1. 雨が水面を「叩く」効果 ─ 雨粒が水面に当たることで風による波の発達を抑制 (海洋気象学では実証済み現象)。強風時ほど効果が顕著
  2. 強風 + 雨は中止判断が早い ─ 危険判断で開催中止になる確率が高く、データに残るのは「強風でも開催可能と判断された比較的穏やかな日」のみ (生存者バイアス)
  3. 選手の意識 ─ 強風 + 雨では選手も慎重に乗り、無理な攻めが減ってインの順当決着が増える

仮説 1 (雨が波を抑える) は本格的に検証するなら別記事レベル。仮説 2 (生存者バイアス) はサンプル設計の問題なので、データの解釈に注意が必要。

雨は実は「凪」傾向だった

雨が荒れない最大の理由は、雨の日は気象的にむしろ風が弱いから、というシンプルな事実。

天気平均風速平均波高
2.95m2.66
2.38m ⬇️2.19 ⬇️
4.04m3.84

雨の平均風速は 2.38m で、晴の 2.95m より 0.57m 弱い。雨は前線通過後の安定気圧の中で降ることが多く、風が落ち着いている時間帯の方が雨が降りやすい、というのは気象学的にも理にかなう。

「雨が荒れる」と感じるのは、雨の日に荒れたレースを覚えてしまう 記憶バイアス。実際は雨の方が気象的に穏やかで、結果として 1 号艇勝率は晴とほぼ同じ (むしろ少し低いだけ)。

逆に 雪は平均風速 4.04m で、冬の北陸・北関東の強風帯と重なる。だからこそ雪 × 淡水場で 1 号艇勝率が 49.14% まで落ちる構造が見える。

風速と1号艇の関係 ─ まとめ

本検証から見える構造は 3 つ:

  1. 「雨だから荒れる」は誤り ─ 雨単体では 1 号艇勝率にはっきりした差は出ない
  2. 「風速」が 1 号艇の安定度を左右する ─ 凪 (0-1m) は 1 号艇が最も強く (晴 59%、雨 57%)、強風 (6m+) になるほど崩れやすい (晴 47%)。天気予報より 風速予報 の方が 1 号艇の信頼度を読む手がかりになる
  3. 強風 + 雨は例外的にやや崩れにくい ─ 6m+ の強風日でも、雨が降っていれば 1 号艇勝率 50.00% で晴の 46.72% より高い。会場によって風の効き方の強さも変わる

BOATCRAFT のアプリ画面には、水質・会場特性を含む 23 つまみ があります。現行版は実際の風速データを入力する機能ではなく、画面上の予想バランスを自分用にチューニングできる項目です。

データが言えること

  • 晴と雨で1号艇勝率に統計的な差はない (z=1.03, p=0.30)
  • 風速が強くなるほど1号艇勝率は下がる (晴: z=25.59, p<0.0001)
  • この傾向は24会場中23場で同じ方向、ただし強さは最大9倍の開きがある
  • 強風時は晴より雨の方が1号艇勝率が高いという逆転が統計的に支持される (z=-2.64, p=0.008)

言いすぎ注意

  • 「雨は関係ない」は天気単体の話。風速との複合効果はここまでの検証
  • 会場差の背景 (水面の地形・広さ) は仮説段階で、地形データとの相関は未検証
  • 逆転現象の3仮説 (雨が波を抑える等) は本記事では検証しきれていない
  • 過去5年の傾向であり、個別レースの結果を保証するものではない

結論

結論を 3 つに集約する。

  1. 「雨は荒れる」はデータで否定された ─ 晴 54.72% vs 雨 54.38%、統計テストで偶然レベル (z=1.03, p=0.30)、差なし
  2. 本当の犯人は風速 ─ 晴の凪 59.16% から強風 46.72% で 12.44 ポイントの落差 (z=25.59, p<0.0001)。24会場中23場で同方向、風速こそが第一要因
  3. 雨は実は凪傾向 ─ 平均風速 2.38m (晴 2.95m より弱い)。「雨が荒れる」は記憶バイアス

競艇予想で「天気」を見て判断するのは、データ的に意味がない。「風速」を見ろ、というのが直近 5 年・約19.8万レースの結論。

合わせて読みたい:

検証データ: 2021-01-01 〜 2025-12-31、約 19.8 万レース (BOATCRAFT データベース) / 天気カテゴリ: 晴 (n=170,596) / 雨 (n=26,387) / 雪 (n=1,174) / 統計テスト: 2 標本比率検定 (z 検定) / 初出: 2026-05-25 / 再集計・深掘り: 2026-07-08 (会場別クロス集計を追加、DBバックフィルにより数値を最新化)

雨より風速の影響を、データで確かめる。

「雨だから荒れる」は根拠なし、「風速6m+で1号艇が崩れやすくなる」がデータの結論。アプリ画面には「気象つまみ」を含む 23 つまみがあります。現行版は実際の風速データを入力する機能ではなく、水質・会場特性を含む画面上の予想バランスを自分用にチューニングできる項目です。

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