— この記事の要点 —

2022 年以降の出走データ 約 105 万走を、コース → 級別の順に統制し、統計検定(z 検定)で体重の純効果を分離した結論:「軽いほど有利」はほぼ神話。だが交絡がすべてではない。① コースを揃えると 56kg 超は 1 コース 1 着率 46.7%(52–54kg は 54.5%)で −7.8pt(統計的に確実、z=20.5)、全 6 コースで一貫して最低 ──「重いと不利」に見える。② 級別を揃えると A1 級では差が統計的に消える(71.2%→70.5%、z=0.83・p=0.41)。だが A2・B1 級には 2〜3pt の小さな実効果(p<0.01)、B2 級には 9.2pt の大きな実効果(z=4.35・p<0.0001)が残る。正体の大半は 56kg 超の選手は B 級が 70%(軽い層は約 52〜58%)という級別の偏り(交絡)だが、下位級ほど体重そのものの直接効果も無視できない。③ 一方で 52kg 未満は 52–54kg よりわずかに低いが、その差は統計的にぎりぎり有意水準に届かない(z=1.94・p=0.053)=軽くしても明確には得しない。ピークは最低体重ぴったりの帯。④ 物理的には「重い→展示タイムが遅い」も確かに存在する(6.803→6.815 秒)が、その差は級別差ほど大きくない。⑤ 女子にも同型の級別交絡があるが(重い帯ほど B 級比率が上昇)、級別を揃えても 3.9〜7.2pt の差が残り、交絡だけでは説明しきれない。ピークは 46kg 未満〜48kg のなだらかな山、50kg 超で −7.9pt(z=7.9・p<0.0001)。

定説と、それを台無しにする「最低体重ルール」

競艇(ボートレース)は 選手・モーター・ボートの総重量が加速や旋回に効く乗り物だ。重ければ加速が鈍り、軽ければ伸びる ── だから「軽い選手ほど有利」というのは、ファンの間で広く信じられている。実際、平均体重は競艇選手のほうが一般人よりかなり軽く、体重管理はプロの自己管理項目でもある。

ところが、この「軽いほど有利」を競争として成り立たせないための仕組みがある。最低体重ルール(体重調整)だ。規定の最低体重を下回る選手には、ボート側に重り(調整用ウエイト)を積んで、全員の下限を揃える。つまり 「ある体重より軽くしても、レース上の総重量は変わらない」。極端に絞っても、その分だけ重りが乗るだけなのだ。

— 最低体重ルールとは —
選手の体重が規定の下限を下回ると、ボートに重りを積んで最低重量に合わせる制度。下限より軽い領域では、軽さがそのまま速さに変換されない(重りで相殺される)。男女で下限が異なり、本記事のデータ上は男子はおおむね 52kg 前後、女子は 47kg 前後に "勝率のピーク(=最適点)" が現れる。

この時点で、「軽いほど有利」には早くも疑問符がつく。下限がある以上、勝率は「軽いほど上がる」のではなく「下限あたりで頭打ちになる」はずだ。では実データはどうなっているのか。約 105 万件の出走記録と統計検定で確かめていく。

検証方法

  1. 期間:2022-01-01 〜 2026-04-14(体重データの記録を確認できる直近の期間。今回の再集計で判明したことだが、2026-04-15 以降は体重データの記録が止まっており、現時点ではまだ収録されていないため対象外とした)
  2. データ:1 走ごとの 着順・進入コース・体重・級別(出走表データ、当該レース時点の値)を使用。性別は選手の登録データから判定。対象は 約 105 万走(男子 約 91 万・女子 約 14 万)
  3. 体重帯:男子は 52kg 前後を、女子は 47kg 前後を境に 2kg 刻みでビン分け
  4. 統制(ここが肝):交絡を排除するため、① コース(進入位置 1〜6)→ ② 級別(A1/A2/B1/B2)の順に "条件を揃えて" 比較し、体重そのものの効果を分離する。各段階の差は 2 標本比率検定(z 検定)で統計的な確からしさを確認した
  5. 除外:フライング・失格・欠場など、着順が 1〜6 にならないレコードは除外。また体重データは 1 日の最終 3 レース(10〜12R)では記録されない仕様のため、これらのレースは対象外とした

競艇で勝率を左右する最大要因は 進入コース(1 コースが圧倒的有利)。だから「重い選手の勝率が低い」を見ても、それが体重のせいなのか、たまたま重い選手が不利なコースに多いだけなのかは分からない。同じコースの中で・同じ級別の中で比べて初めて、体重の純粋な効果が見える。これが検証ラボの基本姿勢だ。

検証①:素朴に体重と勝率を並べると ── 男女で形が違う

まずは何も統制せず、体重帯ごとに 全国勝率(当該出走時点のレーティング)の平均を並べてみる。すると男女で対照的な形が出た。

男子:ピークは 52〜54kg の "逆 U 字"

体重帯出走数平均全国勝率
〜48kg4,7715.29 ※小サンプル
48〜50kg13,7994.85 ※小サンプル
50〜52kg141,2445.20
52〜54kg387,3705.26
54〜56kg222,2315.12
56kg〜142,1004.78
男子の体重帯別平均全国勝率。50-52kgで5.20、52-54kgで5.26とピークを打ち、それより軽くても重くても勝率は下がる逆U字。軽いほど有利ではない
図:男子の体重×平均全国勝率。ピークは52-54kg=「軽いほど有利」ではなく逆U字。

男子は「軽いほど上がる」ではなく、52〜54kg をピークにした逆 U 字だ。50kg 台以降は明確で、54〜56kg(5.12)、56kg〜(4.78)と重いほど下がる。なお 48kg 未満・48〜50kg の 2 帯は出走数が他の帯(14 万〜39 万走)に比べて少なく(各 4,771 走・13,799 走)、値もやや不安定なため参考程度に留めたい。主眼は出走数が十分な 50kg 台以降の明確な逆 U 字にある。最低体重ルールの予想どおり、下限あたりが最適で、そこから軽くしても勝率は伸びていない。

女子:軽いほど高い(ただし下限まで)

体重帯出走数平均全国勝率
〜48kg82,2724.70
48〜50kg31,5154.38
50〜52kg14,4684.17
52〜54kg7,3154.15
54〜56kg3,5803.61
56kg〜2,0703.53

女子は男子より下限(約 47kg)が低く、体重レンジ自体が軽い側にある。そのため 軽い帯ほど勝率が高い単調減少に見える。ただしこれも「軽ければ軽いほど無限に有利」ではなく、下限の床(後述)が効いている。

— ここで一旦の注意 —
この表は「体重と勝率の見かけの関係」にすぎない。重い選手にベテランや下位級が多ければ、それは「体重の効果」ではなく「年齢・級別の効果」かもしれない。本当の体重効果を見るには、条件を揃える必要がある。

検証②:コースを揃えても「重いと不利」は残る ── かに見える

進入コースを固定して、同じコースの中で体重帯ごとの 1 着率・2 連率・3 連率を出す。まずは最重要の 1 コース(男子)。

体重帯(1コース)走数1着率2連率3連率
〜52kg26,58053.8%72.1%81.4%
52〜54kg66,63254.5%72.6%81.8%
54〜56kg37,72852.0%70.5%80.2%
56kg〜23,20046.7%66.0%76.9%

コースを揃えても 52〜54kg がピーク(1 着率 54.5%)、56kg 超が最低(46.7%)。同じ 1 コースを引いているのに −7.8pt の差だ。しかもこの傾向は 全 6 コースで完全に一貫している。

統計メモ:1コースにおける52〜54kg(n=66,632、54.5%)と56kg超(n=23,200、46.7%)の1着率差(7.8pt)は偶然では説明できない水準(z=20.49、p<0.0001)。「同じ1コースでも重い選手は不利」という見かけの差は統計的に確実にある。ただし、この差の"正体"は次の級別統制で姿を変える。
コース52〜54kg 1着率56kg〜 1着率
1 コース54.5%46.7%−7.8pt
2 コース16.3%11.7%−4.6pt
3 コース14.8%10.7%−4.1pt
4 コース12.1%9.1%−3.0pt
5 コース7.2%5.3%−1.9pt
6 コース4.1%2.8%−1.3pt

どのコースでも 56kg 超が最低、52〜54kg がトップ。「重いと不利」はコース統制でも揺るがない ── ここまでなら、定説は半分裏付けられたように見える。だが、まだ揃えていない条件がある。級別だ。

検証③:級別を揃えると、体重差の大半は消える ── ただし B2 級は別

競艇の選手は実力で A1・A2・B1・B2 の 4 階級に分けられ、勝率は級別で大きく違う。もし「重い選手に下位級が多い」なら、コース統制だけでは 体重の効果と級別の効果が混ざってしまう。そこで 級別ごとに、1 コースの「55kg 以下 vs 56kg 超」の 1 着率を比べた。

級別(1コース)〜55kg 1着率56kg〜 1着率
A171.2%70.5%−0.7pt
A260.1%57.8%−2.3pt
B140.8%38.3%−2.5pt
B236.5%27.4%−9.2pt
統計メモ:A1(n=31,438 vs n=2,992)の差0.7ptは偶然の範囲内(z=0.83、p=0.41、統計的に有意でない)。A2(n=38,317 vs n=5,396)の差2.3ptは統計的に確実(z=3.23、p=0.0013)。B1(n=58,724 vs n=14,169)の差2.5ptも統計的に確実(z=5.49、p<0.0001)。B2(n=2,461 vs n=643)の差9.2ptは特に大きく、統計的に極めて確実(z=4.35、p<0.0001)。級別を揃えるとA1は差が統計的に消えるが、A2・B1には小さな実効果、B2には大きな実効果が残る。
体重差の見かけと級別統制後の比較。コース統制だけだと56kg超は1コース1着率-7.8ポイントだが、A1級内-0.7(有意でない)・A2級内-2.3・B1級内-2.5・B2級内-9.2ポイントと、A1は差が消え、B2は大きな差が残る
図:見かけの−7.8ptは、A1級内でほぼ消えるが、B2級内では−9.2ptとむしろ拡大する。

同じ級別の中で比べると、56kg 超のハンデは A1 では統計的に消え、A2・B1 では 2〜3pt の小さな実効果に、B2 では 9.2pt という無視できない実効果に姿を変える。コース統制だけのときの −7.8pt は、どこへ消えたのか。答えの大半は 「体重帯ごとの級別構成」にある。だが、全部ではない。

体重帯(男子)A1 率A 級率
(A1+A2)
B 級率
(B1+B2)
〜52kg22.1%43.9%56.1%
52〜54kg24.5%47.9%52.1%
54〜56kg20.6%41.5%58.5%
56kg〜11.9%29.8%70.2%
体重帯別の級別構成比。56kg超の帯はB級が70.2%を占め、軽い帯の約52〜58%より明らかに下位級が多い。これが見かけの体重差の正体(交絡)の大半
図:体重帯別の級別構成。重い帯ほどB級だらけ(56kg超=B級70.2%)=交絡の正体。

これが種明かしの大半だ。56kg 超の帯は、A1 がわずか 11.9%(軽い帯は 22〜25%)、B 級が 70.2%(軽い帯は約 52〜58%)。重い帯には下位級が圧倒的に多い。だから「重い帯は勝率が低い」の大部分は 体重のせいではなく、その帯にもともと弱い選手(下位級)が多いから。級別という "本当の実力差" を揃えれば、A1 級では体重のハンデは統計的に消え、A2・B1 級でも 2〜3pt 程度まで縮む。

見かけの「−7.8pt」のうち、A1 級では体重の純効果は統計的にゼロ。
A2・B1 級では 2〜3pt、B2 級では 9.2pt の実効果が残る。
大半は 「重い選手に下位級が多い」という別の事実だが、下位級ほど体重そのものの直接効果も無視できない。

これは統計でいう 交絡(こうらく)──「2 つの事柄が関係して見えるのは、裏に共通の第三の要因がある」典型例だ。「重い ↔ 勝率が低い」の裏に「重い ↔ 下位級が多い」が隠れていた。条件を揃えずに相関だけを見ると、原因を取り違える。ただし今回のケースは、交絡を統制してもなお小さくない実効果が残る級(特に B2)があった点で、「全部見かけでした」という単純な話では終わらない。

— なぜ重い選手に下位級が多い? B2 級だけ差が大きいのはなぜ? —
級別の偏りが生まれる理由は 2 つ考えられる。① わずかな体重ハンデが長いキャリアで積み重なり、上位級を維持しづらい(=体重が間接的に効く)。② 加齢や調子で体重が増えた選手が級を落とす。実際、体重と年齢には弱い正の相関があり(男子 r=0.12)、1 コースの平均年齢は 56kg 超が 42.3 歳、52kg 未満が 38.8 歳と、重い帯ほどわずかに高齢だった。B2 級だけ体重の実効果(9.2pt)が際立って大きい点は、B2 級の平均年齢が 28.1 歳と、A1(39.4 歳)・A2(40.5 歳)・B1(40.0 歳)より際立って若いことと関係しているかもしれない。B2 は新人選手が多くを占める階級で、経験やスタート技術で体重ハンデを補う余地が他の級より小さい、という解釈が考えられるが、これも仮説の域を出ない。1 レース単位での体重の直接効果は、A1 ではほぼゼロ、A2・B1 では小さいが実在し、B2 では無視できない大きさというのが、このデータの示すところだ。

I.級別を揃えた"残り効果"は、全コースで一貫しているか

ここまでは 1 コースに絞った話だ。同じ検定を 2〜6 コースでも回すと、級別ごとの「55kg 以下 vs 56kg 超」の差はどう出るか。コース × 級別の全 24 マスで、1 着率の差(軽い − 重い、pt)を並べた。

コースA1A2B1B2
1 コース+0.7+2.3+2.5+9.2
2 コース+1.9+2.5+1.8+2.3
3 コース+1.9+1.5+1.4+1.0
4 コース+0.2+1.4+1.0+1.5
5 コース+0.3+0.1+0.5+0.5
6 コース−0.7+0.8+0.5+0.4

※数値は「55kg以下の1着率 − 56kg超の1着率」(pt)。各マス n=2,300〜71,000。2022-01-01〜2026-04-14・男子。

統計メモ:符号が反転する唯一のマス(6コース・A1、n=31,539・8.58% vs n=2,990・9.30%)は統計的に有意でない(z=−1.34、p=0.181)。24マス中この1マスを除く23マスはすべて「軽い方が高い」向きで一致し、うち1コースのB2(+9.2pt)を除けば残り22マスはすべて±2.5pt以内に収まる。1コースのB2だけが際立った例外で、それ以外は「ごく小さいが概ね一貫した」効果と言える。

つまり、体重の残存効果はコースを問わずおおむね同じ向き・同じ小ささで現れる。唯一の例外は 1 コースの B2(+9.2pt)で、他のどのマスよりも際立って大きい。6 コースの A1 だけ符号が逆転するが、これは統計的に誤差の範囲であり、24 マス中 1 つ程度の逆転は多重比較の下では自然に起こりうる。

II.会場を揃えても、この小さな差は残るか

最後に、この残存効果が全国一律の現象なのか、それとも一部の会場だけの偏りなのかを確認する。データ量の多い B1 級・1 コースに絞り、55kg 以下と 56kg 超の 1 着率差を 24 会場別に算出した(軽い側 n=1,577〜3,216、重い側 n=394〜742)。

会場≦55kg 1着率56kg〜 1着率
大村50.13%40.50%+9.63pt
住之江44.88%37.50%+7.38pt
平和島35.04%28.16%+6.88pt
芦屋45.59%39.34%+6.25pt
江戸川40.24%35.01%+5.23pt
丸亀44.03%38.98%+5.05pt
福岡42.15%37.42%+4.73pt
徳山49.95%46.08%+3.87pt
尼崎43.04%39.24%+3.80pt
若松44.12%40.34%+3.78pt
浜名湖38.88%35.56%+3.32pt
びわこ39.96%37.28%+2.68pt
鳴門34.39%31.86%+2.53pt
三国39.87%37.72%+2.15pt
常滑41.88%40.07%+1.81pt
下関47.86%47.00%+0.86pt
蒲郡40.87%40.18%+0.69pt
戸田31.72%31.29%+0.43pt
唐津38.42%38.07%+0.35pt
桐生34.90%35.16%−0.26pt
宮島39.35%40.34%−0.99pt
40.71%41.74%−1.03pt
多摩川39.34%42.32%−2.98pt
児島40.51%44.02%−3.51pt
統計メモ:差が最大の大村(n=2,346 vs n=563)は統計的に確実(z=4.11、p<0.0001)。差が逆向きで最も大きい児島(n=2,202 vs n=627)は統計的に有意でない(z=−1.58、p=0.115)。江戸川(z=2.59、p=0.0095)・平和島(z=3.44、p=0.0006)も統計的に確実。全国プール(B1級・1コース、n=58,724 vs n=14,169)では差は統計的に確実(z=5.49)だが、24会場に割ると多くは検出力不足で「誤差の範囲」に紛れる。効果が無いのではなく、会場単位ではサンプルが少なすぎて確認しづらい、という統計的にありふれた現象だ。

19/24 会場は「軽い方が 1 着率が高い」という向きで一致し、桐生・宮島・津・多摩川・児島の 5 会場だけがごくわずかに逆向きだった。特定の会場だけで起きている現象ではなく、全国的にごく小さい効果が薄く広く乗っていると考えるのが妥当だ。個々の会場で見ようとすると誤差に埋もれるが、全国プールすれば統計的に確実に検出できる ── これは「小さいが本物の効果」と「サンプルサイズ」の関係を示す典型例でもある。

なぜ「軽くしても得しない」のか ── 床の正体

もう一つの定説「軽いほど有利」も、データは支持しない ── ただし今回はその根拠がそれほど強くない点も正直に書いておく。男子の 52kg 未満(1 コース 53.8%)は、52〜54kg(54.5%)よりわずかに低い。だがこの 0.7pt の差は統計的検定で z=1.94・p=0.053 と、慣例的な有意水準(p<0.05)にわずかに届かない僅差だった。「52kg 未満は明確に不利」とまでは言い切れないが、軽い側でも勝率が明確に伸びるわけではなく、ピークは下限ぴったりの帯にとどまっている。理由は最初に触れた 最低体重ルールだ。下限を下回ると重りで総重量が揃えられるため、「軽くした分の利得」が相殺される。むしろ無理な減量はパワーやコンディションを削るぶん、マイナスにもなりうる。

体重は「軽いほど有利」ではなく、
「最低体重ぴったりが最適、そこから軽くしても明確な得はない」

メカニズム:重い選手は、確かに展示タイムが遅い

では体重は「全く効かない」のか。そうではない。物理は嘘をつかない。展示タイム(=直線の伸び・スピードの目安)を体重帯で見ると、重いほどわずかに遅いのが確認できる(男子・1 コース)。

体重帯(男子・1コース)平均 展示タイム
〜52kg6.803 秒
52〜54kg6.804 秒
54〜56kg6.805 秒
56kg〜6.815 秒

56kg 超は最軽量帯より 約 0.012 秒遅い。展示タイムの 0.01 秒は決して無視できない差で、「重い→加速が鈍い→直線が遅い」という物理は実在する。ただし、これが 1 着率に与える影響は 級別差(実力差)ほど大きくない。体重は効く。だが、世間が思うほど主役ではない。

女子も同じ構造だが、交絡だけでは説明しきれない

女子もコースを揃えると、男子と同じ「最低体重付近がピークの逆 U 字」に近い形が現れる。下限が約 47kg と低いぶん、ピークは軽い側に寄る(1 コース)。

体重帯(女子・1コース)走数1着率
〜46kg5,16249.1%
46〜48kg7,78648.7%
48〜50kg4,84042.9%
50kg〜3,64840.8%

今回の再集計では〜46kg と 46〜48kg がほぼ横並び(49.1%・48.7%)で、単独の鋭いピークというより 軽い側の「高原(プラトー)」に近い形だった。48kg を超えると 42.9%、50kg 超では 40.8% まで下がる。46〜48kg(48.7%)に対し 50kg 超は 40.8%、その差は 7.9ptで統計的に確実(z=7.90、p<0.0001)。

統計メモ:46〜48kg(n=7,786、48.7%)と50kg超(n=3,648、40.8%)の差7.9ptはz=7.90・p<0.0001で統計的に確実。〜46kg(n=5,162、49.1%)と50kg超の差8.3ptも同様に確実(z=7.70・p<0.0001)。

ここで気になるのは、男子で見た級別交絡が女子にも同じように働いているかだ。実際に体重帯別の級別構成を見ると、答えは「イエス」だった。

体重帯(女子)A1 率A 級率
(A1+A2)
B 級率
(B1+B2)
〜46kg14.9%32.6%67.4%
46〜48kg14.6%33.9%66.1%
48〜50kg8.5%26.5%73.5%
50kg〜6.2%19.6%80.4%

男子と同じ構造がある。50kg 超の帯は A1 がわずか 6.2%(軽い帯は約 15%)、B 級が 80.4%(軽い帯は約 66〜67%)。女子でも「重い選手に下位級が多い」という交絡は確かに存在する。

では級別を揃えるとどうなるか。48kg 以下 vs 48kg 超で、級別ごとに 1 着率を比べた(1 コース)。

級別(女子・1コース)〜48kg 1着率48kg〜 1着率
A166.4%62.0%−4.4pt
A258.9%55.0%−3.9pt
B139.1%33.4%−5.7pt
B233.7%26.5%−7.2pt
統計メモ:A1(n=2,529 vs n=527)はz=1.94・p=0.053とぎりぎり有意水準に届かない僅差。A2(n=4,188 vs n=1,261)はz=2.46・p=0.014で統計的に確実。B1(n=7,778 vs n=3,226)はz=5.62・p<0.0001、B2(n=1,324 vs n=603)はz=3.16・p=0.0016でいずれも統計的に確実。女子は級別を揃えても3.9〜7.2ptの差が残り、男子のA1・A2・B1(0.7〜2.5pt)より明らかに大きい。交絡は存在するが、女子は体重そのものの直接効果がより大きく残る。

これは男子との重要な違いだ。男子は A1 級で交絡がほぼ完全に説明できたが、女子は全ての級で 4〜7pt 程度の差が残る。理由は明確ではないが、女子選手の体重レンジ自体が男子より狭く下限に近い選手が多いぶん、同じ 1〜2kg の差が相対的に大きな意味を持つのかもしれない。「女子も交絡で全部説明できる」と決めつけるのは、データが示す以上の主張になる。

構造の骨格は男女共通 ── 下限ぴったりが最適、そこを超えて重いと損、下限を割っても明確な得はない。ただし交絡で説明できる度合いは男女で異なり、女子の方が体重そのものの直接効果が大きく残る。

結論

  1. 「軽いほど有利」はほぼ神話 ── 男子のピークは 52〜54kg、女子は 46kg 未満〜48kg のなだらかな高原。いずれも最低体重ぴったりの範囲で、そこから軽くしても勝率が明確に伸びる根拠はない。
  2. 「重いと不利」は級によって話が違う ── コース統制だと 56kg 超は 1 コース −7.8pt(統計的に確実、z=20.49)。だが級別を揃えると A1 級では差が統計的に消え(z=0.83・p=0.41)、A2・B1 級には 2〜3pt の小さな実効果(各 p<0.01)、B2 級には 9.2pt の大きな実効果(p<0.0001)が残る。差の大半は「重い選手に下位級(B 級 70%)が多い」交絡だが、下位級ほど体重そのものの直接効果も無視できない。
  3. 体重は効く、が主役ではない ── 重い→展示タイムが遅い(6.803→6.815 秒)は実在。だが 1 着率への影響は級別(実力差)ほど大きくない。
  4. 予想に使うなら ── 体重だけを理由に評価を大きく動かすのは早計。体重単体より級別・コース・展示の方がはるかに効く。体重は "下位級かつ重い選手をわずかに割り引く" 程度の補助情報にとどまる。
  5. 女子は交絡だけでは説明しきれない ── ピークは 46kg 未満〜48kg の高原、50kg 超で −7.9pt。級別を揃えても 3.9〜7.2pt の差が残り、男子の A1・A2・B1(0.7〜2.5pt)より明確に大きい。

データが言えること

  • コースを揃えた56kg超の1着率は52-54kg帯より7.8pt低い(z=20.49、p<0.0001)
  • 級別まで揃えるとA1級では差が統計的に消える(z=0.83、p=0.41)
  • A2・B1級には2〜3ptの小さな実効果、B2級には9.2ptの大きな実効果が統計的に確実に残る(各p<0.01)
  • 女子は級別を揃えても3.9〜7.2ptの差が残り、交絡だけでは説明しきれない
  • 52kg未満と52-54kgの差(0.7pt)は統計的にぎりぎり有意水準に届かない(z=1.94、p=0.053)

言いすぎ注意

  • B2級・女子で残る実効果の理由(スタート技術で補いにくい等)は仮説であり、直接検証はしていない
  • 体重は出走表データの当該レース時点の値で、選手の体重は変動しうる
  • 級別を揃えてなお残る差は、体重が級別を通じて間接的に効いている可能性(過剰統制)も排除できない
  • 1コース・B1級の会場別クロスは大半の会場でサンプルが少なく(n数百〜数千)、個々の会場差を断定はできない

データに関する注記

検証データ:2022-01-01 〜 2026-04-14、出走 1,052,735 走(男子 911,515 走・女子 141,220 走、BOATCRAFT データベース、全国 24 会場)/ 統制:進入コース → 級別(A1/A2/B1/B2)の順に条件を揃えて体重の純効果を分離 / 指標:体重帯別の平均全国勝率・1着率・2連率・3連率・平均展示タイム・級別構成比 / 統計検定:2 標本比率検定(z 検定)/ 初出:2026-06-01 / 再集計・深掘り:2026-07-09(統計検定・級別×コース全パターン・会場別クロス集計・女子の級別統制を追加、体重データの収録期間を精査し DB 更新分を反映)

"軽いから買う"では、勝てない。

体重は効く。でも級別やコースほどではない ── データはいつも、直感より少し複雑だ。BOATCRAFT は 選手 × コース × 級別 × モーター × 展示 × 会場のクセ を統合し、交絡を統制したうえで各艇の確率を毎レース計算する。「軽い・重い」のような単発の思い込みに引っ張られず、23 つまみ で自分の狙い(本命重視/穴重視)に合わせてチューニングできる。

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