通説「A1 なら 1 コース 70%」── 級別とは何か
競艇(ボートレース)の選手は成績によって A1・A2・B1・B2 の 4 階級にランク分けされる(半年ごとに勝率・複勝率・事故率などで改定)。トップ約 20% が A1、下位が B2 で、級別はその選手の「現在の実力」を最も端的に表す指標だ。
そして競艇ファンの間でよく語られるのが 「A1 級が 1 号艇に入ったら 1 コースは 70% 堅い」という経験則。逆に「B1・B2 の 1 号艇は当てにならない」とも言われる。この通説は、データでどこまで正しいのか。1 号艇(boat number 1)の選手の級別ごとに、実際の 1 着率を出して検証する。
検証方法
- 期間:2022-01-01 〜 2026-07-08(直近・安定期のデータに限定。1 号艇の 1 着率は 1999 年の 22% 前後から段階的に上昇し、2018 年前後を境に 53〜55% 台で安定している。これは記録の欠損ではなく実際の構造変化とみられ、性質の異なる旧時代を混ぜないため直近の安定期のみを対象とした)
- 対象:全国 24 会場の 1 号艇 249,865 走(級別が記録されている全レース)。級別×コース分析では全 6 コース・全級別を対象
- 集計:選手の級別(A1/A2/B1/B2)ごとに、その艇が 1 着になった割合(1 着率)を算出。コース=艇番(1 号艇 = 1 コース近似、競艇は枠なり進入が大半)
結論①:「A1 なら 70%」は本当だった ── ただし A1 限定
まず核心から。1 号艇の選手を級別で分けると、1 着率はきれいに階段状に並んだ。
| 1 号艇の級別 | 走数 | 1 着率 | 平均との差 |
|---|---|---|---|
| A1 | 80,722 | 70.68% | +18.9pt |
| A2 | 67,774 | 58.96% | +7.2pt |
| B1 | 95,521 | 39.74% | −12.0pt |
| B2 | 5,848 | 34.03% | −17.7pt |
| 全 1 号艇 平均 | 249,865 | 51.75% | ±0 |
- A1 の 1 号艇:70.7%。通説「A1 なら 70%」はほぼ的中で、8 万走でブレずに 7 割を維持している。経験則が正しかった珍しいケースだ
- B1 の 1 号艇:39.7%。一方でこちらは衝撃的で、1 号艇なのに 4 割を切り、半分も勝てない。最も多い級(9.6 万走)なのに、最内枠の優位をほとんど活かせていない
- A1 と B2 の差は 36.7 ポイント(z=58.1, p<0.0001)。同じ「1 号艇」でも、A1(70.7%)と B2(34.0%)では勝率が倍以上違う。1 号艇という枠の価値は、乗る選手の級別で全く別物になる
I.級別の差は、どのコースでも一貫している
この「級別効果」は 1 コースだけの話ではない。2〜6 コースまで含めて 級別 × コースの 1 着率をマトリクスにすると、どのコースでも例外なく A1>A2>B1>B2 の順序が保たれていた。
| コース | A1 | A2 | B1 | B2 |
|---|---|---|---|---|
| 1 コース | 70.7 | 59.0 | 39.7 | 34.0 |
| 2 コース | 21.0 | 16.4 | 9.7 | 8.4 |
| 3 コース | 19.4 | 14.9 | 8.3 | 7.6 |
| 4 コース | 15.9 | 11.8 | 7.0 | 4.2 |
| 5 コース | 10.6 | 7.0 | 3.8 | 1.8 |
| 6 コース | 6.8 | 3.4 | 1.7 | 0.7 |
※数値は 1 着率(%)。2022-2026 年・全国 24 会場。
- 最も堅いのは A1 × 1 コース(70.7%)、最も来ないのは B2 × 6 コース(0.66%)。コースと級別、2 つの軸が揃ったとき、勝率は両極端になる
- 外枠でも A1 は他級より抜けている。A1 の 4 コースは 15.9%、5 コースでも 10.6%。同じ 4 コースでも B2 なら 4.2% しかなく、外枠の 1 着率も結局は級別に比例する
- 2 コースの A1(21.0%)> 1 コースの B2(34.0%)…とはならない点に注意。最内枠の優位は強力で、B2 の 1 コースでも 2 コースの A1 を上回る。コースが先、級別が次という構造が見える
II.同じ A1 の 1 号艇でも、会場で 15.7 ポイント変わる
「A1 の 1 号艇 = 70%」も、あくまで全国平均。24 会場すべてで A1 × 1 号艇の 1 着率を集計すると、同じ A1 の 1 号艇でも 1 着率は大きくばらつく。
| 会場 | 走数 | A1×1号艇 1着率 |
|---|---|---|
| 大村 | 3,706 | 76.93% |
| 徳山 | 3,581 | 76.12% |
| 津 | 3,222 | 75.29% |
| 尼崎 | 3,700 | 73.95% |
| 常滑 | 3,740 | 72.59% |
| 下関 | 3,536 | 72.51% |
| 住之江 | 3,991 | 72.21% |
| 丸亀 | 3,535 | 71.97% |
| 芦屋 | 4,135 | 71.51% |
| 蒲郡 | 3,522 | 71.44% |
| 福岡 | 3,414 | 71.15% |
| 児島 | 3,465 | 71.14% |
| 若松 | 3,751 | 71.07% |
| 唐津 | 3,255 | 71.03% |
| 宮島 | 3,666 | 70.98% |
| 多摩川 | 2,779 | 70.60% |
| 桐生 | 3,334 | 69.41% |
| びわこ | 3,219 | 69.37% |
| 浜名湖 | 3,152 | 69.32% |
| 三国 | 3,281 | 69.03% |
| 鳴門 | 2,962 | 63.71% |
| 平和島 | 2,731 | 62.98% |
| 江戸川 | 2,042 | 61.46% |
| 戸田 | 3,003 | 61.24% |
※A1級の選手が1号艇に乗ったレースのみを対象とした1着率。2022-2026年。
差は 大村と戸田で 15.7 ポイント。「A1 の 1 号艇」という同じ条件でも、会場のクセを重ねて初めて本当の堅さが見える。会場別の傾向は 24 会場ガイド に詳しい。
読み解き方 ── 「1 号艇だから」を「A1 の 1 号艇だから」に
- 1 号艇は「級別とセット」で見る:出走表で 1 号艇を見たら、まず級別を確認する。A1 なら通説どおりの堅さ(70.7%)だが、B1・B2 は 1 号艇でも安定感に乏しい(34〜40%)という前提でデータを読む必要がある
- B1・B2 の 1 号艇は 1 着率が半分以下:1 号艇の 1 着率が 4 割前後しかない以上、2〜6 号艇のいずれかが 1 着になる確率の方が高い計算になる。万舟(頭が外)の出やすさとも関係が深い
- 外枠でも級別差ははっきり出る:4・5 コースの A1(15.9% / 10.6%)は、同じコースの B2(4.2% / 1.8%)より明確に高い。外枠の 1 着率も、乗る選手の級別によって大きく変わる
- 会場のクセも重なる:同じ A1 の 1 号艇でも、大村・徳山・津はデータ上かなり高い水準にあり、江戸川・戸田では大きく下がる。級別 × コース × 会場の 3 点セットで初めて実態が見える
結論
- 「A1 なら 1 コース 70%」は本当 ── A1 の 1 号艇は 1 着率 70.7%。経験則が実データで裏付けられた。
- だが B1 の 1 号艇は 39.7% ── 同じ 1 号艇でも級別で 37 ポイント差(統計的に確実、z=58.1)。「1 号艇だから堅い」ではなく「A1 の 1 号艇だから堅い」。
- 級別の差はどのコースでも一貫 ── 1〜6 コースの全てで A1>A2>B1>B2、24 パターン全てで例外なし。最堅は A1×1 コース(70.7%)、最薄は B2×6 コース(0.66%)。
- 会場差も大きい ── 同じ A1 の 1 号艇でも大村 76.9% 〜 戸田 61.2% と 15.7 ポイント開く(z=13.9)。級別 × コース × 会場で見る。
データが言えること
- 1号艇の1着率は級別でほぼ決まる(A1 70.7%〜B2 34.0%、z=58.1、p<0.0001)
- 4階級すべての境目(A1/A2/B1/B2)が統計的に確実に異なる
- 級別の順序(A1>A2>B1>B2)は全6コースで例外なく成立する
- 会場差も大きく、A1の1号艇でも大村76.9%〜戸田61.2%まで開く(z=13.9)
言いすぎ注意
- 級別はあくまで「平均的な強さ」。個別レースの展示・スタート・モーターで結果は変わる
- コースは艇番で近似しており、前づけ等の実進入変更は反映していない
- 2018年前後を境に1号艇の1着率が構造的に変化しているため、2022年以降のみを対象とした(長期トレンドの検証ではない)
- 会場差の背景(水面の広さ・地形)は仮説段階で、直接検証はしていない
堅さを決めるのは、そこに乗る選手の 級別だ。
データに関する注記
- 対象は 2022-01-01 〜 2026-07-08 の 1 号艇 249,865 走(BOATCRAFT データベース、全国 24 会場)。1 号艇の 1 着率は 1999 年の 22% 前後から段階的に上昇し 2018 年前後で 53〜55% 台に安定しており、性質の異なる旧時代を混ぜないため直近の安定期に期間を限定している
- コースは艇番で近似(1 号艇 = 1 コース)。競艇は枠なり進入が大半だが、前づけ等で実進入が枠と異なる場合がある
- 級別は出走時点のもの。半年ごとの級別改定をまたぐ選手も、各レースの当時の級別で集計している
- 統計検定:2 標本比率検定(z 検定)。z 値が大きいほど、その差が偶然で生じた可能性は低い
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検証データ:2022-01-01 〜 2026-07-08、1 号艇 249,865 走(BOATCRAFT データベース、全国 24 会場)/ 集計指標:級別(A1/A2/B1/B2)× コース × 会場別の 1 着率 / 統計検定:2 標本比率検定(z 検定)/ 初出:2026-06-05 / 再集計・深掘り:2026-07-09(統計検定・会場別クロス集計を追加、DB更新により数値を最新化)