— この記事の要点 —

モーター 2 連率 (= モーターの 1-2 着率) 40% 超 = 強い」というファンの定説は、データ上では 神話寄りの「部分的真実」。福岡・多摩川中心の 約 47 万エントリー (1999-2025 年) で検証した結果、平均は 33.92%・中央値 33.47% で、40% は 上位 20% 相当の閾値に過ぎない。35-40% vs 40-45% の差は +1.0 〜 1.8 ポイント2 つの勝率を比べる方法 (z 検定) こそ p < 0.0001 だが 差の実用的な大きさを示す指標 (効果量 Cohen's h) = 0.026 〜 0.051 は「極めて小さい」水準 ── つまり「統計的に有意 ≠ 実用的に意味あり」の典型例。1% 刻みビンの分布は連続的に緩やか上昇するだけで 40% で線が引ける場所は存在せず、直近 5 年では 45% 以上で 18.62% → 17.65% と逆転頭打ち。BOATCRAFT v10 以降は 閾値ではなく連続的な値 (連続変数) としてモデルに組み込み済み。

なぜ「40%」が神話になったのか

モーター 2 連率 (= そのモーターが過去に 1 着または 2 着に入った率、いわゆる 1-2 着率) が 40% 超のモーターは強い」── 競艇予想の現場では半ば常識として共有されている目安だ。スポーツ紙の予想欄、YouTube のレース予想、SNS の本命予想 ── どこでも「このモーター 40% 超えてる、買い」「30% 台前半か、ちょっと厳しいな」という会話が飛び交う。

たしかにモーター性能は本番のスピード・出足・乗り心地に直結するから、機力指標が予想に効くのは間違いない。ただし疑問がある:

これらに「みんなが言ってるから」「新聞がそう書いてるから」以上の根拠は、実はほとんど語られない。今回、検証ラボ #05 (展示タイム) と同じ手法で、モーター 2 連率という閾値ではなく連続的な値 (連続変数)本番 1 着率 の関係を 27 年分のデータで真正面から検証した。結論を先に言えば、40% という閾値はデータ自然なグラフが折れ曲がる点 (変曲点) ではなく、人為的な「キリの良さ」に過ぎなかった。

検証方法 (会場制約も明記)

検証手順:

  1. 期間: 1999-01-01 〜 2025-12-31 (27 年版) と 2021-01-01 〜 2025-12-31 (直近 5 年版) の 2 系統で集計
  2. 対象: 全エントリーのうち モーター 2 連率が記録されているもの ─ 約 47 万エントリー (27 年版 460,727 件)
  3. 除外したもの: モーター 2 連率が記録なし (データ未取得)あり得ない 0% (新品モーター直後のデータエラー)、100% 超のデータ不良 (数字パースエラーで「345」「71100」みたいな値)、失格・欠場のレース
  4. 指標: 本番 1 着率、1-2 着率 (= 2 連対率)、1-3 着率 (= 3 連対率) を 階層 (5% 刻み)1% 刻みビン の両方で計算
  5. 統計テスト: 2 つの勝率を比べる方法 (z 検定、両側) + 差の実用的な大きさを示す指標 (効果量 Cohen's h) を計算
— データ被覆についての重大な前置き —
本データセットのモーター 2 連率収集は 会場差が極めて大きい。有効サンプル 47 万件のうち 99% が福岡 (76%) と多摩川 (21%) に集中し、補助的に芦屋・戸田が含まれる。他 20 会場のサンプルは事実上ゼロ。本記事の結論は 「全国 24 会場の代表値」ではなく「福岡・多摩川を中心とした 4 会場の傾向」として読む必要がある。平和島・住之江・大村など他会場での一般化は、別途データ収集後の追加検証が必要 ── この制約は本文末尾の付記でも改めて言及する。

分布で見る「40%」の正体

まず分布から確認しよう。「40% 超のモーター」は実際どれくらい珍しいのか?

期間N平均中央値標準偏差p75p9040% 以上の割合
27 年 (1999-2025)460,72733.92%33.47%8.9438.54%44.38%20.20%
直近 5 年 (2021-2025)76,60433.91%33.66%9.1138.55%44.44%20.62%

このシンプルな分布表だけでも、いくつか重要な事実が読み取れる:

「40% = 上位 20% のモーター」を意味するラベルとしては正しい。
「40% で世界が変わる閾値」かどうかは別問題 ── ここからが本題。

階層別 1 着率 ─ 単調増加 or 折れ曲がり?

次に、モーター 2 連率を 5% 刻みの階層に区切って、本番 1 着率の推移を見る。「40% で世界が変わる」なら、35-40% と 40-45% の間に 非連続なジャンプが観察されるはず。

27 年版 (全コース混在)

モーター 2 連率N1 着率2 連率3 連率
< 20%15,47314.78%30.59%46.89%
20-30%84,11615.82%32.28%48.77%
30-35%90,89116.41%33.04%50.04%
35-40%70,97017.43%34.71%51.83%
40-45%35,88718.45%36.00%53.40%
45-50%13,92219.74%37.84%54.59%
50-60%10,63020.14%38.31%55.38%
≥ 60%3,36520.15%39.79%58.42%

直近 5 年版 (全コース混在)

モーター 2 連率N1 着率2 連率3 連率
< 20%2,92314.54%29.18%44.71%
20-30%14,03116.14%32.66%49.64%
30-35%15,10916.61%33.59%50.27%
35-40%12,45917.23%33.94%50.98%
40-45%6,37418.98%37.09%54.55%
45-50%2,47618.62%35.90%52.50%
50-60%1,96317.88%37.49%54.41%
≥ 60%59517.65%37.82%55.80%

この 2 つの表は、それぞれ違うストーリーを語る:

つまり「40% で線が引ける」というより、「30% 台後半から緩やかに本番 1 着率が上がっていき、40-45% 付近でやや効率が良くなって、それ以上はサンプル薄でブレる」というのが正確な描写。"閾値" ではなく "勾配" の話。

1% 刻みビン ─ 40% で何かが起きるか?

5% 刻みの階層では分解能が荒い。「40% でジャンプ」が本当に存在するなら、1% 刻みで描けば明確に折れ曲がるはず。実際にやってみた結果がこれ。

— モーター 2 連率 (1% 刻み) × 本番 1 着率 / 27 年版 —
24% 22% 20% 18% 16% 14% ← 40% ライン (ここに変曲点はない) 20 25 30 35 40 45 50 53 モーター 2 連率 (%)
縦軸 = 本番 1 着率、横軸 = モーター 2 連率 (1% 刻み)、赤破線 = 40% ライン。27 年・約 47 万エントリーから N ≥ 1,000 のビンのみ描画 (20-53%)。40% 周辺に折れ曲がりや段差は確認できず、緩やかな単調増加 + ノイズ。49% 以上は N が薄くなりブレが大きい (信頼区間も広がる)。

このグラフが本記事で最も重要な絵だ。1% 刻みのビンで描いたとき、もし「40% で世界が変わる」なら、赤い破線の左右で 明確な高さの段差が見えるはず。実際には:

結論はシンプル: 40% は人為的なキリの良い数字であって、データ自然な変曲点ではない。「39% は弱モーター、40% は強モーター」と切る根拠はデータ上どこにもない。

有意性検定の罠 ─ 「統計的に有意」 ≠ 「実用的に意味あり」

とはいえ、35-40% と 40-45% には +1.02 ポイントの差が確かに存在する。「これは偶然じゃないか?」を確かめるのが z 検定。さらに重要なのは 効果量 Cohen's h ── 「差が偶然じゃない (= 統計的に有意)」ことと「差が実用的に意味ある」ことは別物だからだ。

— 表の列の見方 —
低い% / 高い% = 比較する 2 つの階層 (それぞれの 件数 と 1 着率を併記) / 差 (ポイント) = 高い% の 1 着率 − 低い% の 1 着率 / z 値 = 差の大きさを統計学のスケールで測った数値 (絶対値が大きいほど「偶然じゃなさそう」) / p 値 = 偶然この差が出る確率 (小さいほど「偶然ではない」、慣例として 0.05 未満で有意) / 効果量 h = 差が実用的にどれくらい大きいかを示す指標 (Cohen's h)

27 年版の有意性検定

低い%件数1着率高い%件数1着率差 (ポイント)z 値p 値効果量 h評価
35-40%70,97017.43%40-45%35,88718.45%+1.024.18< 0.00010.026極めて小
30-40%161,86116.86%40-50%49,80918.81%+1.9510.08< 0.00010.050極めて小

直近 5 年版の有意性検定

低い%件数1着率高い%件数1着率差 (ポイント)z 値p 値効果量 h評価
35-40%12,45917.23%40-45%6,37418.98%+1.752.970.0030.044極めて小
30-40%27,56816.89%40-50%8,85018.88%+1.994.29< 0.00010.051極めて小
— 効果量 Cohen's h の読み方 —
Cohen's h は 2 つの比率を比べる「効果量」指標。慣例として 0.20 = 小さい効果0.50 = 中程度の効果0.80 = 大きい効果と判定する。本検証の結果はすべて 0.026 〜 0.051、つまり「小さい効果」のラインの 1/4 〜 1/8 程度。「差はあるが、実用的にはほぼ無視できる」レベル。

このセクションが本記事のクライマックス。読み取るべきは:

統計的に有意 ≠ 実用的に意味あり。
差は確かにある、でも 1 ポイント前後 ── 単独で予想を動かすには小さすぎる。

直近 5 年の異変 ─ 45% 以上は逆転する

27 年版では「高ければ高いほど 1 着率は上がる」が成立していた。だが 直近 5 年版を見ると話が変わる ── 45% 以上の階層で 1 着率が頭打ち、むしろ逆転している。

モーター 2 連率N直近 5 年 1 着率前階層との差
35-40%12,45917.23%
40-45% (ピーク)6,37418.98%+1.75
45-50%2,47618.62%-0.36
50-60%1,96317.88%-0.74
≥ 60%59517.65%-0.23

40-45% で 18.98% のピークを打ち、45-50% (18.62%) → 50-60% (17.88%) → ≥ 60% (17.65%) と 3 階層連続で下がる。サンプル数は確かに薄い (45% 以上は合計 5,034 件) ので統計的なノイズの可能性は否定できないが、無視できないパターンだ。考えられる理由は 2 つ:

どちらにせよ実戦的な意味は明確: 「45% 超だから絶対本命」と信用しきってはいけない。40-45% 帯までの素直な向上を信じて、その先は他の要素 (コース・選手級別・スタートタイミング) と組み合わせて判断する ── これが直近 5 年データの示す投票スタンス。

1 号艇に絞っても結論は変わらない

「全コース混在で結論を出しても、コース有利の影響が紛れ込むのでは?」── という当然の疑問に対して、コース有利の影響を排除して (= コース統制) 1 号艇 (= ほぼ 1 コース) に絞った階層別成績も用意した。1 号艇の通常進入率は 95%+ なので、「1 コース選手」の代わりの指標 (代替指標) として十分機能する。

27 年版 (1 号艇のみ)

モーター 2 連率N1 着率2 連率3 連率
< 20%2,57533.44%52.70%65.59%
20-30%14,13435.06%54.28%67.21%
30-35%15,07036.79%55.66%68.52%
35-40%11,84737.78%56.66%69.69%
40-45%5,97339.59%57.64%70.89%
45-50%2,29240.88%60.03%72.60%
50-60%1,78739.68%59.21%73.42%
≥ 60%56341.39%62.52%76.20%

直近 5 年版 (1 号艇のみ)

モーター 2 連率N1 着率2 連率3 連率
< 20%46248.05%66.45%75.11%
20-30%2,35251.02%70.07%80.44%
30-35%2,52851.78%71.12%80.62%
35-40%2,08753.81%71.06%81.50%
40-45%1,08555.39%73.46%83.41%
45-50%39653.79%74.24%85.35%
50-60%33749.55%71.22%80.71%
≥ 60%9353.76%74.19%87.10%

1 号艇に絞っても結論はほぼ同じ:

つまりコース有利の影響を排除 (統制) しても、結論は揺るがない: 「40% は閾値ではなく勾配の話、45% 以上は信用しすぎない」

結論 ─ 神話寄りの「部分的真実」

福岡・多摩川中心の 約 47 万エントリー から導かれる結論を 5 つに集約する。

  1. 「40% 超 = 強いモーター」は神話寄りの「部分的真実」 ─ z 検定は p < 0.0001 で「有意」 と返すが、効果量 Cohen's h = 0.026 〜 0.051 は「小さい効果」ラインの 1/4 〜 1/8。差は確かにあるが、実用的にはほぼ無視できる水準。
  2. 「40% で世界が変わる」線は存在しない ─ 1% 刻みビンの分布は、39% (17.49%) → 40% (17.95%) → 41% (19.02%) と緩やかに上がるだけ。40% という閾値は 人為的なキリの良さであって、データ自然な変曲点ではない。
  3. 35-40% vs 40-45% の差はわずか +1.0 〜 1.8 ポイント ─ これは舟券レベルでの実用差としては小さい。「モーター 40% 超だから本命」「39% だから消し」のような単独判断はデータ上根拠が薄い。
  4. 直近 5 年では 45% 以上で頭打ち〜逆転 ─ 40-45% (18.98%) でピークを打ち、45-50% → 50-60% → ≥ 60% で連続的に下がる (18.62% → 17.88% → 17.65%)。整備直後にたまたま出た見せかけの良数字 (偽信号) や小サンプルのノイズの可能性が高く、超高数値を盲信してはいけない
  5. 使える運用は「閾値ではなく連続変数 (連続的な値)」 ─ 「40% を境に世界が変わる」と扱うのは誤り。「33% より 38%、38% より 43% のほうがわずかに 1 着率は高い」という勾配のシグナルとして、コース・選手級別・スタートタイミングと組み合わせて使うのが正解。
「40% は強い」は半分本当、半分神話。
閾値ではなく勾配 ── 連続変数として、他要素と組み合わせて使え。

予想にどう活かすか

本検証から得られる実戦応用は 4 つ:

  1. 「40% 超だから本命」は単独判断としては弱い ─ +1 〜 2 ポイントの効果なので、コース・選手級別・スタートタイミングと組み合わせない限り、舟券判断を動かす材料にはならない。「本命艇 (1 コース) のモーターが 40% 超」と「本命艇のモーターが 35% だが選手 A1 級・スタート抜群」を比べたら、後者のほうがほぼ確実に強い
  2. 45% 超を「絶対本命」扱いするな ─ 直近 5 年では 45% 以上で 1 着率が頭打ち〜逆転する。整備直後にたまたま出た見せかけの良数字 (偽信号) や小サンプルのノイズの可能性が高く、「45% 超を見たら鉄板買い」は危険な運用
  3. 逆に「6 号艇 × 40% 超」のような相対インパクトは妙味候補 ─ 6 号艇の元の 1 着率 5.90% に対して、40% 超では 7.36% (+1.46pp、相対 +25%)。絶対勝率は低いままだが、3 連単の穴目に紛れ込ませる材料としては考慮の余地あり (別途検証推奨)
  4. 連続変数 (連続的な値) として、他要素と「足し算」で使う ─ 「33% < 38% < 43%」という勾配のシグナルとして、選手・コース・展示・風速・スタートタイミングの加重合計に小さな重み係数で組み込む。これが BOATCRAFT v10 以降の予測モデルの方針

BOATCRAFT のアプリは、モーター 2 連率を 閾値ではなく連続変数 (連続的な値) として、選手成績・コース有利・展示タイム・風速・会場別クセと合成した予測モデルで処理している。「モーター 40% 超のフラグ」だけを見るのではなく、すべての要素を統合した期待値で勝負する設計。23 つまみ でモーター重視 / コース重視 / 選手重視のバランスを自分用にチューニングできる。

データ品質に関する注記

本記事の結論を正しく読むために、データの制約を明記する:

誠実に言えば、本記事は「福岡・多摩川を中心とした 4 会場で、モーター 40% 神話は部分的真実だった」と読むのが正確。全国 24 会場で同じパターンが成立するかは、追加データ収集後の別検証で確認する必要がある。「40% で線が引けない」「閾値より勾配」という構造的な結論自体は、サンプルが 47 万件と十分大きい以上、福岡・多摩川では強く確証されたものとして読んでよい。

検証データ: 1999-01-01 〜 2025-12-31、約 47 万エントリー (BOATCRAFT データベース、モーター 2 連率の記録あり、福岡・多摩川中心 4 会場) / 統計テスト: 2 つの勝率を比べる方法 (z 検定、両側) + 差の実用的な大きさを示す指標 (効果量 Cohen's h) / 最終更新: 2026-05-28

40% は閾値じゃない連続変数として使え

「40% 超だから本命」も「39% だから消し」も、+1 〜 2 ポイントの差で判断するには弱すぎる。モーター 2 連率は閾値ではなく勾配のシグナル ── これがデータの結論。BOATCRAFT は モーター × 選手 × コース × 展示 × 風速 を統合した予測モデルで、すべての要素を加重合計の連続変数として処理。23 つまみ でモーター重視 / コース重視 / 選手重視のバランスを自分用にチューニング可能。

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