なぜ「40%」が神話になったのか
「モーター 2 連率 (= そのモーターが過去に 1 着または 2 着に入った率、いわゆる 1-2 着率) が 40% 超のモーターは強い」── 競艇 (ボートレース) 予想の現場では半ば常識として共有されている目安だ。スポーツ紙の予想欄、YouTube のレース予想、SNS の本命予想 ── どこでも「このモーター 40% 超えてる、買い」「30% 台前半か、ちょっと厳しいな」という会話が飛び交う。
たしかにモーター性能は本番のスピード・出足・乗り心地に直結するから、機力指標が予想に効くのは間違いない。ただし疑問がある:
- なぜちょうど 40% なのか? ─ 35% でも 45% でもなく、なぜキリの良い 40%?
- 40% で本当に「世界が変わる」のか? ─ 39% と 41% の艇の本番 1 着率は本当にジャンプするのか?
- 40% 超ならどれくらい強くなるのか? ─ 「強い」とは具体的に何ポイント差?
- 会場や艇番で効き方は違うのか? ─ 全国一律で同じ閾値が効くのか?
これらに「みんなが言ってるから」「新聞がそう書いてるから」以上の根拠は、実はほとんど語られない。今回、検証ラボ #05 (展示タイム) と同じ手法で、モーター 2 連率という閾値ではなく連続的な値 (連続変数) と 本番 1 着率 の関係を、全国 24 会場・約 200 万エントリーのデータで真正面から検証した。結論を先に言えば、40% という閾値はデータ自然なグラフが折れ曲がる点 (変曲点) ではなく、人為的な「キリの良さ」に過ぎなかった。
検証方法 ── 「限定的」から「全国」へ、何が変わったか
検証手順:
- 期間: 2018-01-01 〜 2026-06-30 (全国データ版・約 8.5 年) と 2021-07-01 〜 2026-06-30 (直近 5 年相当版) の 2 系統で集計
- 対象: 全エントリーのうち モーター 2 連率が記録されているもの ─ 約 200 万エントリー (全国データ版 2,004,877 件)
- 除外したもの: モーター 2 連率が記録なし (データ未取得)、あり得ない 0% (新品モーター直後のデータエラー)、100% 超のデータ不良 (数字パースエラーで「345」「71100」みたいな値)、失格・欠場のレース
- 指標: 本番 1 着率、1-2 着率 (= 2 連対率)、1-3 着率 (= 3 連対率) を 階層 (5% 刻み) と 1% 刻みビン の両方で計算
- 統計テスト: 2 つの勝率を比べる方法 (z 検定、両側) + 差の実用的な大きさを示す指標 (効果量 Cohen's h) を計算
| 収集範囲 | 有効 N | 福岡 | 多摩川 | 他 22 会場 (合算) |
|---|---|---|---|---|
| 旧稿 (1999-2025) | 460,727 | 76% | 21% | 約 3% |
| 今回 (2018-2026) | 2,004,877 | 5.4% | 4.4% | 90.2% |
分布で見る「40%」の正体
まず分布から確認しよう。「40% 超のモーター」は実際どれくらい珍しいのか?
| 期間 | N | 平均 | 中央値 | 標準偏差 | p75 | p90 | 40% 以上の割合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 全国データ版 (2018-2026) | 2,004,877 | 33.81% | 33.33% | 8.84 | 38.61% | 44.20% | 20.59% |
| 直近 5 年相当 (2021H2-2026H1) | 1,175,534 | 33.80% | 33.48% | 8.74 | 38.58% | 44.00% | 20.44% |
このシンプルな分布表だけでも、いくつか重要な事実が読み取れる:
- 平均は 33.81%、中央値は 33.33% ─ 教科書値の「40%」より明確に低い。普通のモーターは 33-34% 帯に密集する
- 40% 以上は約 20.6% (上位 20% 相当) ─ つまり「40% 超 = 強い」は「5 機に 1 機の上位機」というシグナル。決して当たり前ではないが、希少でもない
- 全国データ版と直近 5 年相当版で平均はほぼ変化なし (33.81% → 33.80%) ─ 「最近モーターが整備されて 40% が当たり前」という言説はデータ上明確に否定される
- p90 (上位 10% 閾値) でも 44.20% ─ 45% 超は「上位 10% の精鋭」、50% 超は「上位 5% の極上機」と理解すると感覚が合う
階層別 1 着率 ─ 単調増加 or 折れ曲がり?
次に、モーター 2 連率を 5% 刻みの階層に区切って、本番 1 着率の推移を見る。「40% で世界が変わる」なら、35-40% と 40-45% の間に 非連続なジャンプが観察されるはず。
全国データ版 (2018-2026、全コース混在)
| モーター 2 連率 | N | 1 着率 | 2 連率 | 3 連率 |
|---|---|---|---|---|
| < 20% | 94,135 | 15.31% | 31.28% | 47.67% |
| 20-30% | 524,575 | 15.65% | 31.96% | 48.51% |
| 30-35% | 546,679 | 16.41% | 33.12% | 50.01% |
| 35-40% | 426,653 | 17.40% | 34.60% | 51.69% |
| 40-45% | 238,887 | 18.69% | 36.37% | 53.67% |
| 45-50% | 90,716 | 19.75% | 38.07% | 55.48% |
| 50-60% | 63,944 | 19.76% | 38.03% | 55.38% |
| ≥ 60% | 19,288 | 20.16% | 38.66% | 56.62% |
直近 5 年相当版 (2021H2-2026H1、全コース混在)
| モーター 2 連率 | N | 1 着率 | 2 連率 | 3 連率 |
|---|---|---|---|---|
| < 20% | 55,001 | 15.34% | 31.13% | 47.52% |
| 20-30% | 303,144 | 15.68% | 32.02% | 48.59% |
| 30-35% | 323,184 | 16.37% | 33.11% | 50.03% |
| 35-40% | 253,971 | 17.48% | 34.70% | 51.79% |
| 40-45% | 142,020 | 18.67% | 36.32% | 53.49% |
| 45-50% | 52,084 | 19.78% | 38.01% | 55.42% |
| 50-60% | 35,326 | 19.61% | 37.70% | 55.19% |
| ≥ 60% | 10,804 | 20.14% | 38.69% | 56.84% |
この 2 つの表は、旧稿とは違って ほぼ同じ形を描く:
- 全国データ版・直近 5 年相当版とも素直な右肩上がり ─ < 20% (15.31%/15.34%) から ≥ 60% (20.16%/20.14%) まで、ほぼ階段状に上がっていく。最大差は +4.85 ポイント。「高ければ高いほど良い」がおおむね成立する
- 35-40% → 40-45% の差は +1.29 ポイント (全国) / +1.19 ポイント (直近 5 年) ─ 「世界が変わる閾値」と呼ぶには弱すぎる小さな段差。30-35% → 35-40% (+0.99pt) や 20-30% → 30-35% (+0.76pt) と同程度の地味な上昇
- 45% 以降はほぼ横ばい (プラトー) ─ 45-50% (19.75%) → 50-60% (19.76%) → ≥ 60% (20.16%) と全国データ版ではむしろ微増、直近 5 年相当版でも 19.78% → 19.61% → 20.14% と小刻みに揺れるだけで、明確な下落トレンドはない
旧稿では 27 年版 (単調増加) と直近 5 年版 (45% 超で逆転) で 形が食い違っていた ── これはサンプルの偏りが原因だった可能性が高い。全国 24 会場データでは 2 つの期間がほぼ同じ形になり、「40% で線が引ける」というより「30% 台後半から緩やかに本番 1 着率が上がっていき、45% 付近で伸びが鈍化してほぼ横ばいになる」というのが正確な描写。"閾値" ではなく "勾配 (45% 以降はプラトー)" の話。45% 以上の逆転については、後述の「45% 以上は本当に頭打ち〜逆転するのか ── 訂正」で詳しく扱う。
I. 1% 刻みビン ─ 40% で何かが起きるか?
5% 刻みの階層では分解能が荒い。「40% でジャンプ」が本当に存在するなら、1% 刻みで描けば明確に折れ曲がるはず。全国データ版 (2018-2026・約 200 万エントリー) で実際にやってみた結果がこれ。
このグラフが本記事で最も重要な絵だ。1% 刻みのビンで描いたとき、もし「40% で世界が変わる」なら、赤い破線の左右で 明確な高さの段差が見えるはず。実際には:
- 38%, 39%, 40%, 41% の本番 1 着率は 17.74% → 17.93% → 18.22% → 18.88% ─ 緩やかに上がっているだけで、40% で段差はない
- 41% (18.88%) より 42% (18.76%) のほうがわずかに低い ─ 「40% を境に急上昇する」わけではなく、近隣ビンは常に混ざり合っている
- 35% から 53% まで、全体は滑らかな上昇トレンド + 1% ビンのノイズ ─ 「閾値」ではなく「勾配」の構造
- 49% (20.84%) の直後に 50% (19.49%)・51% (19.10%) と一時的に下がり、52-53% で再び上がる ─ N = 5,000-7,000 規模でもこの程度のブレは生じる。個々の 1% ビンの上下動を過大評価してはいけない
結論はシンプル: 40% は人為的なキリの良い数字であって、データ自然な変曲点ではない。「39% は弱モーター、40% は強モーター」と切る根拠はデータ上どこにもない。全国 200 万件で検証しても、この結論は変わらない。
有意性検定の罠 ─ 「統計的に有意」 ≠ 「実用的に意味あり」
とはいえ、35-40% と 40-45% には +1.29 ポイント (全国データ版)の差が確かに存在する。「これは偶然じゃないか?」を確かめるのが z 検定。さらに重要なのは 効果量 Cohen's h ── 「差が偶然じゃない (= 統計的に有意)」ことと「差が実用的に意味ある」ことは別物だからだ。
全国データ版 (2018-2026) の有意性検定
| 低い% | 件数 | 1着率 | 高い% | 件数 | 1着率 | 差 (ポイント) | z 値 | p 値 | 効果量 h | 評価 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 35-40% | 426,653 | 17.40% | 40-45% | 238,887 | 18.69% | +1.29 | 13.18 | < 0.0001 | 0.034 | 極めて小 |
| 30-40% | 973,332 | 16.84% | 40-50% | 329,603 | 18.98% | +2.14 | 27.99 | < 0.0001 | 0.056 | 極めて小 |
直近 5 年相当版 (2021H2-2026H1) の有意性検定
| 低い% | 件数 | 1着率 | 高い% | 件数 | 1着率 | 差 (ポイント) | z 値 | p 値 | 効果量 h | 評価 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 35-40% | 253,971 | 17.48% | 40-45% | 142,020 | 18.67% | +1.19 | 9.37 | < 0.0001 | 0.031 | 極めて小 |
| 30-40% | 577,155 | 16.86% | 40-50% | 194,104 | 18.97% | +2.11 | 21.21 | < 0.0001 | 0.055 | 極めて小 |
このセクションが本記事のクライマックス。読み取るべきは:
- p 値 < 0.0001 ─ 「差は偶然ではない」 ─ 200 万サンプルだから、わずかな差でも z 値は跳ね上がり、偶然である確率は事実上ゼロになる
- Cohen's h = 0.031 〜 0.056 ─ 「差は実用的には極小」 ─ 効果量は「小さい効果」のラインの 1/4 〜 1/6 程度。「ほぼ無視できる」レベル
- これが統計の罠 ─ 大サンプルでは、どんなに小さな差でも「統計的に有意」と判定されてしまう。だから「有意 ≠ 意味あり」を分けて考える必要がある
- +1.19 〜 2.14 ポイントの差を実戦でどう使うか? ─ 100 円券で考えれば 0.01 〜 0.02 円の期待値変化。「40% 超だけで本命を切り替える」根拠としては明らかに弱い
差は確かにある、でも 1 ポイント前後 ── 単独で予想を動かすには小さすぎる。
II. 全国に会場を広げても結論は同じか ── 福岡・多摩川・他 22 会場
今回のデータ拡大が持つ最大の意味は、「福岡・多摩川だけの傾向」だったものを、全国 24 会場で検証し直せるようになったこと。35-40% → 40-45% の 1 着率の伸びを、福岡・多摩川・他 22 会場 (合算) の 3 グループで比較した (全国データ版、2018-2026)。
| グループ | 35-40% N | 35-40% 1着率 | 40-45% N | 40-45% 1着率 | 差 | z値 | p値 | 効果量h |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 福岡 | 24,272 | 16.92% | 12,053 | 18.83% | +1.91 | 4.51 | < 0.0001 | 0.050 |
| 多摩川 | 20,050 | 17.45% | 9,917 | 17.82% | +0.37 | 0.79 | 0.428 (非有意) | 0.010 |
| 他 22 会場 (合算) | 382,331 | 17.42% | 216,917 | 18.72% | +1.30 | 12.62 | < 0.0001 | 0.034 |
結論: 3 グループとも 同じ方向 (モーター 2 連率が高いほど 1 着率も上がる) だが、大きさにはばらつきがある。福岡は +1.91pt と最も大きく、旧稿で唯一の主要サンプルだったこの会場は、実は「やや効果が出やすい会場」だった可能性がある。一方 多摩川は +0.37pt で統計的に有意差なし (p=0.43) ── 旧稿でもう一方の柱だった多摩川単独では、この効果はそもそも確認できない。他 22 会場を合算した「全国平均」は +1.30pt で、旧稿が 47 万件から出していた +1.02 〜 1.75pt のレンジとほぼ一致する。会場によって効果の出方が異なることは、全国 24 会場のデータで初めて定量的に確認できた発見であり、旧稿では原理的に見えなかった構造だ。
III. 級別 (A1/A2/B1/B2) で見ても同じか
もう一つの疑問: モーター 2 連率の効果は、選手の実力 (級別) によって変わるのか。A1・A2・B1・B2 それぞれの中で、35-40% → 40-45% の 1 着率の伸びを比較した (全国データ版、2018-2026)。
| 級別 | 35-40% N | 35-40% 1着率 | 40-45% N | 40-45% 1着率 | 差 | z値 | p値 | 効果量h |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A1 | 92,911 | 27.47% | 52,549 | 29.45% | +1.98 | 8.06 | < 0.0001 | 0.044 |
| A2 | 91,703 | 23.84% | 50,784 | 25.32% | +1.48 | 6.23 | < 0.0001 | 0.034 |
| B1 | 210,205 | 12.02% | 118,042 | 13.07% | +1.05 | 8.76 | < 0.0001 | 0.032 |
| B2 | 31,834 | 4.92% | 17,512 | 5.02% | +0.10 | 0.49 | 0.624 (非有意) | 0.005 |
結論: モーター 2 連率の効果は 級が上がるほど大きい。A1 級では +1.98pt とはっきり差が出る一方、B2 級では +0.10pt とほぼ差がなく、統計的にも有意差なし (p=0.62)。「良いモーターを引いても、それを勝ちに変える技術がなければ生きない」と読める ── 機力と人力は独立ではなく、実力の高い選手ほどモーター差を上手く使いこなしている可能性がある。ただしこれは相関にとどまり、B2 級の絶対的な 1 着率自体が低い (4-5% 台) ことが影響している可能性も否定できない点には注意したい。
「45% 以上で頭打ち〜逆転」は本当か ── 訂正
| モーター 2 連率 | 旧稿 N (福岡・多摩川中心) | 旧稿 1着率 | 今回 N (全国24会場) | 今回 1着率 |
|---|---|---|---|---|
| 40-45% (旧稿のピーク) | 6,374 | 18.98% | 142,020 | 18.67% |
| 45-50% | 2,476 | 18.62% (-0.36) | 52,084 | 19.78% (+1.11) |
| 50-60% | 1,963 | 17.88% (-0.74) | 35,326 | 19.61% (-0.17) |
| ≥ 60% | 595 | 17.65% (-0.23) | 10,804 | 20.14% (+0.53) |
旧稿では 45% 以上で 3 階層連続の下落が見えたが、今回のデータでは 45-50% → 50-60% → ≥ 60% のどの差も統計的に有意ではない (z 値はすべて 1.3 未満、p 値はすべて 0.19 超)。むしろ全体としては 19.6〜20.2% のレンジで ほぼ横ばい (プラトー)、続く ≥ 60% ではむしろ小幅な増加が見られる。
旧稿の「逆転」は、n=595〜2,476 という小標本のノイズだった可能性が高い。45% 超のような高い数値のモーターは元々出現頻度が低く、サンプルが薄いと数階層の偶然の上下動が「トレンド」に見えてしまう ── これは統計的検証で最も陥りやすい罠のひとつであり、本記事自身がその実例になっていたことを正直に記録しておく。「45% 超を鉄板扱いするな」という実戦的な結論は変わらないが、その理由は「逆転するから」ではなく「そこから先はサンプルが薄く、確度が下がるから」と訂正する。
1 号艇に絞っても結論は変わらない
「全コース混在で結論を出しても、コース有利の影響が紛れ込むのでは?」── という当然の疑問に対して、コース有利の影響を排除して (= コース統制) 1 号艇 (= ほぼ 1 コース) に絞った階層別成績も用意した。1 号艇の通常進入率は 95%+ なので、「1 コース選手」の代わりの指標 (代替指標) として十分機能する。
全国データ版 (2018-2026、1 号艇のみ)
| モーター 2 連率 | N | 1 着率 | 2 連率 | 3 連率 |
|---|---|---|---|---|
| < 20% | 15,609 | 48.95% | 67.63% | 77.78% |
| 20-30% | 86,931 | 49.97% | 68.40% | 78.36% |
| 30-35% | 91,035 | 51.20% | 69.48% | 79.21% |
| 35-40% | 71,232 | 52.85% | 70.93% | 80.58% |
| 40-45% | 40,266 | 54.36% | 72.17% | 81.59% |
| 45-50% | 15,208 | 56.12% | 74.00% | 83.08% |
| 50-60% | 10,795 | 55.28% | 73.29% | 82.65% |
| ≥ 60% | 3,298 | 57.06% | 75.44% | 84.32% |
1 号艇に絞っても結論はほぼ同じ (直近 5 年相当版でも全コース混在と同様の形が確認できたため、ここでは全国データ版に絞って掲載する):
- 1 号艇 35-40% (52.85%) vs 40-45% (54.36%) の差は +1.51 ポイント (z=4.85, p<0.0001, 効果量 h=0.030) ─ 全コース混在と同程度の地味な向上。「1 号艇でモーター 40% 超を引けば +10pp 跳ねる」のような神話は成立しない
- 40% で線が引ける現象は確認できない ─ 1 号艇でも連続的な緩やかな増加のまま
- 45% 以上もほぼ横ばい ─ 45-50% (56.12%) → 50-60% (55.28%) → ≥ 60% (57.06%) と小刻みに揺れるが、明確な下落トレンドはない。全コース混在の結果 (前セクションで訂正済み) と整合する
つまりコース有利の影響を排除 (統制) しても、結論は揺るがない: 「40% は閾値ではなく勾配の話、45% 以上は伸びが鈍るがサンプルが薄くなるだけで劇的な逆転はない」。
結論 ─ 神話寄りの「部分的真実」
全国 24 会場・約 200 万エントリー (2018-2026) から導かれる結論を 7 つに集約する。
- 「40% 超 = 強いモーター」は神話寄りの「部分的真実」 ─ z 検定は p < 0.0001 で「有意」 と返すが、効果量 Cohen's h = 0.031 〜 0.056 は「小さい効果」ラインの 1/4 〜 1/6。差は確かにあるが、実用的にはほぼ無視できる水準。全国 24 会場・約 200 万エントリーで再検証しても同じ結論。
- 「40% で世界が変わる」線は存在しない ─ 1% 刻みビンの分布は、38% (17.74%) → 39% (17.93%) → 40% (18.22%) → 41% (18.88%) と緩やかに上がるだけ。40% という閾値は 人為的なキリの良さであって、データ自然な変曲点ではない。
- 35-40% vs 40-45% の差はわずか +1.2 〜 1.3 ポイント ─ これは舟券レベルでの実用差としては小さい。「モーター 40% 超だから本命」「39% だから消し」のような単独判断はデータ上根拠が薄い。
- 【訂正】「45% 以上で頭打ち〜逆転」は全国データでは再現されない ─ 45% 以降は 19.6〜20.2% のレンジで ほぼ横ばい (プラトー)、45-50% → 50-60% → ≥ 60% のどの差も統計的に有意ではない (p 値はすべて 0.19 超)。旧稿 (福岡・多摩川中心) が報告した逆転は、n=595〜2,476 の小標本によるノイズだった可能性が高い。
- 会場によって効果の出方は異なる ─ 福岡 (+1.91pt) と他 22 会場合算 (+1.30pt) は統計的に有意だが、多摩川単独は +0.37pt で非有意 (p=0.43)。「全国一律の効果」ではなく会場ごとのばらつきを含んだ平均値として読む必要がある。
- 級別によっても効果は異なる ─ A1 級 (+1.98pt) → A2 級 (+1.48pt) → B1 級 (+1.05pt) → B2 級 (+0.10pt、非有意) と、級が下がるほど効果は薄れ、B2 級ではほぼ消える。良いモーターを活かせるかどうかも選手の実力次第という構造が見える。
- 使える運用は「閾値ではなく連続変数 (連続的な値)」 ─ 「40% を境に世界が変わる」と扱うのは誤り。「33% より 38%、38% より 43% のほうがわずかに 1 着率は高い」という勾配のシグナルとして、コース・選手級別・スタートタイミングと組み合わせて使うのが正解。
閾値ではなく勾配 ── 連続変数として、他要素と組み合わせて使え。
データが言えること
- 35-40%→40-45%で1着率は+1.2〜1.3pt上昇 (全国約200万件・p<0.0001)、ただし効果量は「小さい効果」ラインの1/4〜1/6程度
- 1%刻みで見ても40%に段差 (変曲点) はなく、緩やかな連続的勾配
- 会場別では福岡+1.91pt・他22会場合算+1.30ptで有意、級別ではA1級ほど効果が大きい
言いすぎ注意
- 「45%以上で頭打ち〜逆転」は初稿の誤り。全国データでは再現されず、45%以降はほぼ横ばい
- 多摩川単独・B2級では35-40%→40-45%の差は統計的に有意ではない (全国一律の効果ではない)
- 本記事は2018年以降・全国24会場のデータが基準。1999-2017年 (福岡中心) は参考情報にとどまる
予想にどう活かすか
本検証から得られる実戦応用は 4 つ:
- 「40% 超だから本命」は単独判断としては弱い ─ +1.2 〜 2.1 ポイントの効果なので、コース・選手級別・スタートタイミングと組み合わせない限り、舟券判断を動かす材料にはならない。「本命艇 (1 コース) のモーターが 40% 超」と「本命艇のモーターが 35% だが選手 A1 級・スタート抜群」を比べたら、後者のほうがほぼ確実に強い
- 45% 超を「絶対本命」扱いするな ─ 45% 以上はサンプルが相対的に薄くなり (全国データでも該当 N は 1 万〜9 万件規模)、階層単位のブレが大きくなりやすい。全国データでは明確な頭打ちや逆転は確認されなかったが、「45% 超を見たから鉄板」と思い込むのも根拠としては薄い
- 逆に「6 号艇 × 40% 超」のような相対インパクトは妙味候補 ─ 6 号艇の全国平均 1 着率 3.66% に対して、40% 超では 4.64% (+0.98pp、相対 +27%)。絶対勝率は低いままだが、3 連単の穴目に紛れ込ませる材料としては考慮の余地あり (別途検証推奨)
- 連続変数 (連続的な値) として、他要素と「足し算」で使う ─ 「33% < 38% < 43%」という勾配のシグナルとして、選手・コース・展示・風速・スタートタイミングの加重合計に小さな重み係数で組み込む。これが BOATCRAFT v10 以降の予測モデルの方針
BOATCRAFT のアプリは、モーター 2 連率を 閾値ではなく連続変数 (連続的な値) として、選手成績・コース有利・展示タイム・会場別クセと合成した予測モデルで処理している。「モーター 40% 超のフラグ」だけを見るのではなく、すべての要素を統合した期待値で勝負する設計。23 つまみ でモーター重視 / コース重視 / 選手重視のバランスを自分用にチューニングできる。
データ品質に関する注記 (2026-07-08 更新)
本記事の結論を正しく読むために、データの制約を明記する:
- 2018 年以降はデータ収集が全 24 会場に拡大している ─ 2018-01-01 〜 2026-06-30 の約 200 万エントリーは、最多の福岡 (107,485 件・5.4%) から最少の江戸川 (75,559 件・3.8%) まで、24 会場すべてが比較的均等にカバーされている。本記事の「全国データ」はこの期間を指す
- 1999-2017 年は依然として限定的 ─ 1999-2011 年は福岡単独、2012-2017 年は福岡 + 多摩川のみの収集で、他会場のサンプルは事実上ゼロだった (旧稿はこの期間中心の 47 万エントリーで検証していた)。本記事の全国データ分析には 1999-2017 年を含めていない
- 会場によって 40% 効果の出方は異なる ─ 福岡 (+1.91pt) と他 22 会場合算 (+1.30pt) は統計的に有意だが、多摩川単独は +0.37pt で非有意 (p=0.43)。「+0.37 〜 1.91pt の幅で会場差はある」であり、全国一律の効果ではなく会場ごとのばらつきを含んだ平均値として読む必要がある
- 級別によっても効果の出方は異なる ─ A1 級 (+1.98pt) から B2 級 (+0.10pt、非有意) まで、選手の実力によって効果の大きさが変わる
- 進入コース番号は 99.9% が記録なし のため、1 号艇のみの集計は艇番 = 1 で代替。1 号艇の通常進入率は 95%+ なので近似可
- 100% 超のデータ不良 (数字パースエラーでモーター 2 連率が 100 を超える値、最大 71100) は全期間で確認、全件除外済み。あり得ない 0% (未公表モーター / 交換直後の記録なし) も全期間で除外済み
誠実に言えば、本記事は「2018 年以降・全国 24 会場の約 200 万エントリーで、モーター 40% 神話は部分的真実だった」と読むのが正確。1999-2017 年まで遡った完全な 27 年間・全国規模での一般化は、当時のデータ収集範囲の制約上できない。「40% で線が引けない」「閾値より勾配」「45% 以上もほぼ横ばい (旧稿の逆転は再現されず)」という結論は、200 万件・全 24 会場という大規模かつ地理的に偏りの小さいサンプルで確証されたものとして読んでよい。ただし会場別・級別に分解すると効果の大きさにはばらつきがあり、「全国どこでも・誰でも同じだけ効く」という意味ではない。
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- 用語集 ─ モーター 2 連率 (基本知識編)
- 24 場のクセシリーズ ─ 全会場ガイド (会場別の効き方の違い)
検証データ: 2018-01-01 〜 2026-06-30、約 200 万エントリー (BOATCRAFT データベース、モーター 2 連率の記録あり、全国 24 会場) / 統計テスト: 2 つの勝率を比べる方法 (z 検定、両側) + 差の実用的な大きさを示す指標 (効果量 Cohen's h) / 初出: 2026-05-28 / 最終更新: 2026-07-08 (全国データで再検証・一部訂正)