— この記事の要点 (2026-07-08 全国データで再検証) —

モーター 2 連率 (= モーターの 1-2 着率) 40% 超 = 強い」というファンの定説は、データ上では 神話寄りの「部分的真実」。2026 年 5 月の初稿は福岡・多摩川中心の約 47 万エントリーで検証したが、データ収集が 2018 年以降に全国 24 会場へ拡大していたことが判明したため、今回は 約 200 万エントリー (2018-2026 年・全国 24 会場) で再検証した。平均は 33.81%・中央値 33.33% で、40% は 上位約 20% 相当の閾値に過ぎない ── これは旧稿の値 (33.92%/33.47%) とほぼ一致し、限定的なサンプルでも全国平均を大きく外していなかったことが確認された。35-40% vs 40-45% の差は +1.2 〜 1.3 ポイント、2 つの勝率を比べる方法 (z 検定) こそ p < 0.0001 だが 差の実用的な大きさを示す指標 (効果量 Cohen's h) = 0.031 〜 0.056 は「極めて小さい」水準 ── つまり「統計的に有意 ≠ 実用的に意味あり」の典型例。1% 刻みビンの分布は連続的に緩やか上昇するだけで 40% で線が引ける場所は存在しない。【訂正】旧稿が報告した「直近 5 年で 45% 以上は頭打ち〜逆転 (18.62% → 17.65%)」は、全国データでは 再現されず、45% 以降はほぼ横ばい (プラトー) に留まる ── 旧稿の小標本 (n=595〜2,476) によるノイズだった可能性が高い。会場別では福岡・他 22 会場合算は有意だが 多摩川単独では非有意、級別では A1 級ほど効果が大きく B2 級ではほぼ消えるという新たな深掘りも判明。BOATCRAFT v10 以降は 閾値ではなく連続的な値 (連続変数) としてモデルに組み込み済み。

なぜ「40%」が神話になったのか

モーター 2 連率 (= そのモーターが過去に 1 着または 2 着に入った率、いわゆる 1-2 着率) が 40% 超のモーターは強い」── 競艇 (ボートレース) 予想の現場では半ば常識として共有されている目安だ。スポーツ紙の予想欄、YouTube のレース予想、SNS の本命予想 ── どこでも「このモーター 40% 超えてる、買い」「30% 台前半か、ちょっと厳しいな」という会話が飛び交う。

たしかにモーター性能は本番のスピード・出足・乗り心地に直結するから、機力指標が予想に効くのは間違いない。ただし疑問がある:

これらに「みんなが言ってるから」「新聞がそう書いてるから」以上の根拠は、実はほとんど語られない。今回、検証ラボ #05 (展示タイム) と同じ手法で、モーター 2 連率という閾値ではなく連続的な値 (連続変数) と 本番 1 着率 の関係を、全国 24 会場・約 200 万エントリーのデータで真正面から検証した。結論を先に言えば、40% という閾値はデータ自然なグラフが折れ曲がる点 (変曲点) ではなく、人為的な「キリの良さ」に過ぎなかった。

検証方法 ── 「限定的」から「全国」へ、何が変わったか

検証手順:

  1. 期間: 2018-01-01 〜 2026-06-30 (全国データ版・約 8.5 年) と 2021-07-01 〜 2026-06-30 (直近 5 年相当版) の 2 系統で集計
  2. 対象: 全エントリーのうち モーター 2 連率が記録されているもの ─ 約 200 万エントリー (全国データ版 2,004,877 件)
  3. 除外したもの: モーター 2 連率が記録なし (データ未取得)、あり得ない 0% (新品モーター直後のデータエラー)、100% 超のデータ不良 (数字パースエラーで「345」「71100」みたいな値)、失格・欠場のレース
  4. 指標: 本番 1 着率、1-2 着率 (= 2 連対率)、1-3 着率 (= 3 連対率) を 階層 (5% 刻み) と 1% 刻みビン の両方で計算
  5. 統計テスト: 2 つの勝率を比べる方法 (z 検定、両側) + 差の実用的な大きさを示す指標 (効果量 Cohen's h) を計算
— データ被覆についての重大なアップデート (2026-07-08 再検証で判明) —
2026 年 5 月の初稿執筆時点では、本データセットの モーター 2 連率 収集は会場差が極めて大きく、有効サンプル 47 万件のうち 99% が福岡 (76%) と多摩川 (21%) に集中していた。今回の再検証で、2018 年以降はデータ収集が全 24 会場に拡大されていたことを確認。2018-01-01 〜 2026-06-30 の約 200 万エントリーは 全 24 会場すべてが 75,559 件 (江戸川) 〜 107,485 件 (福岡) の範囲に収まり、比較的均等に分布している (福岡でも全体の 5.4%、最少の江戸川で 3.8%)。一方 1999-2017 年は依然として福岡単独 (2012 年以降は + 多摩川) に限られるため、本記事では 2018 年以降を「全国データ」として主たる分析対象とし、1999-2017 年は参考情報 (本文末尾の付記) にとどめる。
収集範囲有効 N福岡多摩川他 22 会場 (合算)
旧稿 (1999-2025)460,72776%21%約 3%
今回 (2018-2026)2,004,8775.4%4.4%90.2%

分布で見る「40%」の正体

まず分布から確認しよう。「40% 超のモーター」は実際どれくらい珍しいのか?

期間N平均中央値標準偏差p75p9040% 以上の割合
全国データ版 (2018-2026)2,004,87733.81%33.33%8.8438.61%44.20%20.59%
直近 5 年相当 (2021H2-2026H1)1,175,53433.80%33.48%8.7438.58%44.00%20.44%
統計メモ: 全国データ版 N=2,004,877 (race_entries × race_results 結合、モーター 2 連率 0% 超 100% 以下、失格・欠場除く、2018-01-01〜2026-06-30、全 24 会場)。旧稿 (福岡・多摩川中心・N=460,727) との平均差はわずか -0.11pt (33.92% → 33.81%) ── 限定サンプルでも全国平均から大きくは外れていなかったが、「外れていないと推測できる」のと「200 万件で確認した」のは意味が異なる。

このシンプルな分布表だけでも、いくつか重要な事実が読み取れる:

階層別 1 着率 ─ 単調増加 or 折れ曲がり?

次に、モーター 2 連率を 5% 刻みの階層に区切って、本番 1 着率の推移を見る。「40% で世界が変わる」なら、35-40% と 40-45% の間に 非連続なジャンプが観察されるはず。

全国データ版 (2018-2026、全コース混在)

モーター 2 連率N1 着率2 連率3 連率
< 20%94,13515.31%31.28%47.67%
20-30%524,57515.65%31.96%48.51%
30-35%546,67916.41%33.12%50.01%
35-40%426,65317.40%34.60%51.69%
40-45%238,88718.69%36.37%53.67%
45-50%90,71619.75%38.07%55.48%
50-60%63,94419.76%38.03%55.38%
≥ 60%19,28820.16%38.66%56.62%

直近 5 年相当版 (2021H2-2026H1、全コース混在)

モーター 2 連率N1 着率2 連率3 連率
< 20%55,00115.34%31.13%47.52%
20-30%303,14415.68%32.02%48.59%
30-35%323,18416.37%33.11%50.03%
35-40%253,97117.48%34.70%51.79%
40-45%142,02018.67%36.32%53.49%
45-50%52,08419.78%38.01%55.42%
50-60%35,32619.61%37.70%55.19%
≥ 60%10,80420.14%38.69%56.84%
統計メモ: 45% 以上の階層 (45-50 / 50-60 / ≥60) はどの隣接ペアも統計的に有意な差がない (z 値はすべて 1.3 未満、p 値はすべて 0.19 超)。旧稿では同じ階層が福岡・多摩川中心の小標本 (合計 n=595〜2,476) だったため、45-50%→50-60%→≥60% が 18.62%→17.88%→17.65% と連続的に下がって見えたが、全国版 (合計 n=19,288〜90,716、最大 30 倍のサンプル) ではこの下落は再現されない。詳細は本文後半「45% 以上は本当に頭打ち〜逆転するのか」で扱う。
モーター2連率の階層別本番1着率。全国2018-2026版・直近5年相当版とも単調増加に近く、45%以降はほぼプラトー。40%に段差はなく閾値ではなく勾配
図:階層別1着率。全国データ版・直近5年相当版とも同じ形。40%に段差なし=勾配、45%以降はプラトー。

この 2 つの表は、旧稿とは違って ほぼ同じ形を描く:

旧稿では 27 年版 (単調増加) と直近 5 年版 (45% 超で逆転) で 形が食い違っていた ── これはサンプルの偏りが原因だった可能性が高い。全国 24 会場データでは 2 つの期間がほぼ同じ形になり、「40% で線が引ける」というより「30% 台後半から緩やかに本番 1 着率が上がっていき、45% 付近で伸びが鈍化してほぼ横ばいになる」というのが正確な描写。"閾値" ではなく "勾配 (45% 以降はプラトー)" の話。45% 以上の逆転については、後述の「45% 以上は本当に頭打ち〜逆転するのか ── 訂正」で詳しく扱う。

I. 1% 刻みビン ─ 40% で何かが起きるか?

5% 刻みの階層では分解能が荒い。「40% でジャンプ」が本当に存在するなら、1% 刻みで描けば明確に折れ曲がるはず。全国データ版 (2018-2026・約 200 万エントリー) で実際にやってみた結果がこれ。

— モーター 2 連率 (1% 刻み) × 本番 1 着率 / 全国データ版 (2018-2026) —
24% 22% 20% 18% 16% 14% ← 40% ライン (ここに変曲点はない) 20 25 30 35 40 45 50 53 モーター 2 連率 (%)
縦軸 = 本番 1 着率、横軸 = モーター 2 連率 (1% 刻み)、赤破線 = 40% ライン。全国データ版 (2018-2026)・約 200 万エントリーから N ≥ 1,000 のビンのみ描画 (20-53%)。40% 周辺に折れ曲がりや段差は確認できず、緩やかな単調増加 + ノイズ。49% 以上は N が相対的に薄くなりブレがやや大きい。

このグラフが本記事で最も重要な絵だ。1% 刻みのビンで描いたとき、もし「40% で世界が変わる」なら、赤い破線の左右で 明確な高さの段差が見えるはず。実際には:

結論はシンプル: 40% は人為的なキリの良い数字であって、データ自然な変曲点ではない。「39% は弱モーター、40% は強モーター」と切る根拠はデータ上どこにもない。全国 200 万件で検証しても、この結論は変わらない。

有意性検定の罠 ─ 「統計的に有意」 ≠ 「実用的に意味あり」

とはいえ、35-40% と 40-45% には +1.29 ポイント (全国データ版)の差が確かに存在する。「これは偶然じゃないか?」を確かめるのが z 検定。さらに重要なのは 効果量 Cohen's h ── 「差が偶然じゃない (= 統計的に有意)」ことと「差が実用的に意味ある」ことは別物だからだ。

— 表の列の見方 —
低い% / 高い% = 比較する 2 つの階層 (それぞれの 件数 と 1 着率を併記) / 差 (ポイント) = 高い% の 1 着率 − 低い% の 1 着率 / z 値 = 差の大きさを統計学のスケールで測った数値 (絶対値が大きいほど「偶然じゃなさそう」) / p 値 = 偶然この差が出る確率 (小さいほど「偶然ではない」、慣例として 0.05 未満で有意) / 効果量 h = 差が実用的にどれくらい大きいかを示す指標 (Cohen's h)

全国データ版 (2018-2026) の有意性検定

低い%件数1着率高い%件数1着率差 (ポイント)z 値p 値効果量 h評価
35-40%426,65317.40%40-45%238,88718.69%+1.2913.18< 0.00010.034極めて小
30-40%973,33216.84%40-50%329,60318.98%+2.1427.99< 0.00010.056極めて小

直近 5 年相当版 (2021H2-2026H1) の有意性検定

低い%件数1着率高い%件数1着率差 (ポイント)z 値p 値効果量 h評価
35-40%253,97117.48%40-45%142,02018.67%+1.199.37< 0.00010.031極めて小
30-40%577,15516.86%40-50%194,10418.97%+2.1121.21< 0.00010.055極めて小
— 効果量 Cohen's h の読み方 —
Cohen's h は 2 つの比率を比べる「効果量」指標。慣例として 0.20 = 小さい効果0.50 = 中程度の効果0.80 = 大きい効果と判定する。本検証の結果はすべて 0.031 〜 0.056、つまり「小さい効果」のラインの 1/4 〜 1/6 程度。「差はあるが、実用的にはほぼ無視できる」レベル。旧稿 (福岡・多摩川中心・0.026〜0.051) とほぼ同水準で、サンプルを 4 倍に増やしても評価は変わらない。
モーター2連率の差の効果量Cohen's h。全国データ版・直近5年相当版とも0.031〜0.056で、小さい効果ライン0.20の4分の1から6分の1。統計的に有意でも実用的には極小
図:効果量Cohen's h。全国200万件で再計算しても「小さい効果0.20」の1/4以下=統計的有意≠実用的に意味あり。

このセクションが本記事のクライマックス。読み取るべきは:

統計的に有意 ≠ 実用的に意味あり。
差は確かにある、でも 1 ポイント前後 ── 単独で予想を動かすには小さすぎる。

II. 全国に会場を広げても結論は同じか ── 福岡・多摩川・他 22 会場

今回のデータ拡大が持つ最大の意味は、「福岡・多摩川だけの傾向」だったものを、全国 24 会場で検証し直せるようになったこと。35-40% → 40-45% の 1 着率の伸びを、福岡・多摩川・他 22 会場 (合算) の 3 グループで比較した (全国データ版、2018-2026)。

グループ35-40% N35-40% 1着率40-45% N40-45% 1着率z値p値効果量h
福岡24,27216.92%12,05318.83%+1.914.51< 0.00010.050
多摩川20,05017.45%9,91717.82%+0.370.790.428 (非有意)0.010
他 22 会場 (合算)382,33117.42%216,91718.72%+1.3012.62< 0.00010.034
統計メモ: 福岡 (n=24,272 / 12,053) は z=4.51, p<0.0001 で有意。多摩川 (n=20,050 / 9,917) は z=0.79, p=0.428 で 非有意 (差がないとは言い切れないが、あるとも言い切れない)。他 22 会場合算 (n=382,331 / 216,917) は z=12.62, p<0.0001 で有意。

結論: 3 グループとも 同じ方向 (モーター 2 連率が高いほど 1 着率も上がる) だが、大きさにはばらつきがある。福岡は +1.91pt と最も大きく、旧稿で唯一の主要サンプルだったこの会場は、実は「やや効果が出やすい会場」だった可能性がある。一方 多摩川は +0.37pt で統計的に有意差なし (p=0.43) ── 旧稿でもう一方の柱だった多摩川単独では、この効果はそもそも確認できない。他 22 会場を合算した「全国平均」は +1.30pt で、旧稿が 47 万件から出していた +1.02 〜 1.75pt のレンジとほぼ一致する。会場によって効果の出方が異なることは、全国 24 会場のデータで初めて定量的に確認できた発見であり、旧稿では原理的に見えなかった構造だ。

III. 級別 (A1/A2/B1/B2) で見ても同じか

もう一つの疑問: モーター 2 連率の効果は、選手の実力 (級別) によって変わるのか。A1・A2・B1・B2 それぞれの中で、35-40% → 40-45% の 1 着率の伸びを比較した (全国データ版、2018-2026)。

級別35-40% N35-40% 1着率40-45% N40-45% 1着率z値p値効果量h
A192,91127.47%52,54929.45%+1.988.06< 0.00010.044
A291,70323.84%50,78425.32%+1.486.23< 0.00010.034
B1210,20512.02%118,04213.07%+1.058.76< 0.00010.032
B231,8344.92%17,5125.02%+0.100.490.624 (非有意)0.005
統計メモ: A1 z=8.06 p<0.0001 h=0.044 / A2 z=6.23 p<0.0001 h=0.034 / B1 z=8.76 p<0.0001 h=0.032 / B2 z=0.49 p=0.624 (非有意) h=0.005。効果量は最大の A1 でも「小さい効果」ライン (0.20) の 1/4 程度。

結論: モーター 2 連率の効果は 級が上がるほど大きい。A1 級では +1.98pt とはっきり差が出る一方、B2 級では +0.10pt とほぼ差がなく、統計的にも有意差なし (p=0.62)。「良いモーターを引いても、それを勝ちに変える技術がなければ生きない」と読める ── 機力と人力は独立ではなく、実力の高い選手ほどモーター差を上手く使いこなしている可能性がある。ただしこれは相関にとどまり、B2 級の絶対的な 1 着率自体が低い (4-5% 台) ことが影響している可能性も否定できない点には注意したい。

「45% 以上で頭打ち〜逆転」は本当か ── 訂正

— 本セクションは初稿 (2026-05-28) からの訂正です —
初稿では、直近 5 年サンプル (福岡・多摩川中心、45% 以上は合計 n=5,034) をもとに「40-45% (18.98%) をピークに、45-50% → 50-60% → ≥ 60% で 1 着率が連続的に下がる (18.62% → 17.88% → 17.65%)」と報告した。今回、全国 24 会場・約 20 倍のサンプル (直近 5 年相当版、45% 以上は合計 n=98,214) で再検証したところ、この「頭打ち〜逆転」は再現されなかった。誤りを正直に記録する。
モーター 2 連率旧稿 N (福岡・多摩川中心)旧稿 1着率今回 N (全国24会場)今回 1着率
40-45% (旧稿のピーク)6,37418.98%142,02018.67%
45-50%2,47618.62% (-0.36)52,08419.78% (+1.11)
50-60%1,96317.88% (-0.74)35,32619.61% (-0.17)
≥ 60%59517.65% (-0.23)10,80420.14% (+0.53)

旧稿では 45% 以上で 3 階層連続の下落が見えたが、今回のデータでは 45-50% → 50-60% → ≥ 60% のどの差も統計的に有意ではない (z 値はすべて 1.3 未満、p 値はすべて 0.19 超)。むしろ全体としては 19.6〜20.2% のレンジで ほぼ横ばい (プラトー)、続く ≥ 60% ではむしろ小幅な増加が見られる。

統計メモ: 全国データ版で 45-50% (n=90,716, 19.75%) vs 50-60% (n=63,944, 19.76%): z=0.05, p=0.96。50-60% vs ≥60% (n=19,288, 20.16%): z=1.22, p=0.22。直近5年相当版でも 45-50% (n=52,084, 19.78%) vs 50-60% (n=35,326, 19.61%): z=-0.62, p=0.54。50-60% vs ≥60% (n=10,804, 20.14%): z=1.21, p=0.23。いずれも「差はない」と判定される水準。

旧稿の「逆転」は、n=595〜2,476 という小標本のノイズだった可能性が高い。45% 超のような高い数値のモーターは元々出現頻度が低く、サンプルが薄いと数階層の偶然の上下動が「トレンド」に見えてしまう ── これは統計的検証で最も陥りやすい罠のひとつであり、本記事自身がその実例になっていたことを正直に記録しておく。「45% 超を鉄板扱いするな」という実戦的な結論は変わらないが、その理由は「逆転するから」ではなく「そこから先はサンプルが薄く、確度が下がるから」と訂正する。

1 号艇に絞っても結論は変わらない

「全コース混在で結論を出しても、コース有利の影響が紛れ込むのでは?」── という当然の疑問に対して、コース有利の影響を排除して (= コース統制) 1 号艇 (= ほぼ 1 コース) に絞った階層別成績も用意した。1 号艇の通常進入率は 95%+ なので、「1 コース選手」の代わりの指標 (代替指標) として十分機能する。

全国データ版 (2018-2026、1 号艇のみ)

モーター 2 連率N1 着率2 連率3 連率
< 20%15,60948.95%67.63%77.78%
20-30%86,93149.97%68.40%78.36%
30-35%91,03551.20%69.48%79.21%
35-40%71,23252.85%70.93%80.58%
40-45%40,26654.36%72.17%81.59%
45-50%15,20856.12%74.00%83.08%
50-60%10,79555.28%73.29%82.65%
≥ 60%3,29857.06%75.44%84.32%

1 号艇に絞っても結論はほぼ同じ (直近 5 年相当版でも全コース混在と同様の形が確認できたため、ここでは全国データ版に絞って掲載する):

つまりコース有利の影響を排除 (統制) しても、結論は揺るがない: 「40% は閾値ではなく勾配の話、45% 以上は伸びが鈍るがサンプルが薄くなるだけで劇的な逆転はない」

結論 ─ 神話寄りの「部分的真実」

全国 24 会場・約 200 万エントリー (2018-2026) から導かれる結論を 7 つに集約する。

  1. 「40% 超 = 強いモーター」は神話寄りの「部分的真実」 ─ z 検定は p < 0.0001 で「有意」 と返すが、効果量 Cohen's h = 0.031 〜 0.056 は「小さい効果」ラインの 1/4 〜 1/6。差は確かにあるが、実用的にはほぼ無視できる水準。全国 24 会場・約 200 万エントリーで再検証しても同じ結論。
  2. 「40% で世界が変わる」線は存在しない ─ 1% 刻みビンの分布は、38% (17.74%) → 39% (17.93%) → 40% (18.22%) → 41% (18.88%) と緩やかに上がるだけ。40% という閾値は 人為的なキリの良さであって、データ自然な変曲点ではない。
  3. 35-40% vs 40-45% の差はわずか +1.2 〜 1.3 ポイント ─ これは舟券レベルでの実用差としては小さい。「モーター 40% 超だから本命」「39% だから消し」のような単独判断はデータ上根拠が薄い。
  4. 【訂正】「45% 以上で頭打ち〜逆転」は全国データでは再現されない ─ 45% 以降は 19.6〜20.2% のレンジで ほぼ横ばい (プラトー)、45-50% → 50-60% → ≥ 60% のどの差も統計的に有意ではない (p 値はすべて 0.19 超)。旧稿 (福岡・多摩川中心) が報告した逆転は、n=595〜2,476 の小標本によるノイズだった可能性が高い。
  5. 会場によって効果の出方は異なる ─ 福岡 (+1.91pt) と他 22 会場合算 (+1.30pt) は統計的に有意だが、多摩川単独は +0.37pt で非有意 (p=0.43)。「全国一律の効果」ではなく会場ごとのばらつきを含んだ平均値として読む必要がある。
  6. 級別によっても効果は異なる ─ A1 級 (+1.98pt) → A2 級 (+1.48pt) → B1 級 (+1.05pt) → B2 級 (+0.10pt、非有意) と、級が下がるほど効果は薄れ、B2 級ではほぼ消える。良いモーターを活かせるかどうかも選手の実力次第という構造が見える。
  7. 使える運用は「閾値ではなく連続変数 (連続的な値)」 ─ 「40% を境に世界が変わる」と扱うのは誤り。「33% より 38%、38% より 43% のほうがわずかに 1 着率は高い」という勾配のシグナルとして、コース・選手級別・スタートタイミングと組み合わせて使うのが正解。
「40% は強い」は半分本当、半分神話。
閾値ではなく勾配 ── 連続変数として、他要素と組み合わせて使え。

データが言えること

  • 35-40%→40-45%で1着率は+1.2〜1.3pt上昇 (全国約200万件・p<0.0001)、ただし効果量は「小さい効果」ラインの1/4〜1/6程度
  • 1%刻みで見ても40%に段差 (変曲点) はなく、緩やかな連続的勾配
  • 会場別では福岡+1.91pt・他22会場合算+1.30ptで有意、級別ではA1級ほど効果が大きい

言いすぎ注意

  • 「45%以上で頭打ち〜逆転」は初稿の誤り。全国データでは再現されず、45%以降はほぼ横ばい
  • 多摩川単独・B2級では35-40%→40-45%の差は統計的に有意ではない (全国一律の効果ではない)
  • 本記事は2018年以降・全国24会場のデータが基準。1999-2017年 (福岡中心) は参考情報にとどまる

予想にどう活かすか

本検証から得られる実戦応用は 4 つ:

  1. 「40% 超だから本命」は単独判断としては弱い ─ +1.2 〜 2.1 ポイントの効果なので、コース・選手級別・スタートタイミングと組み合わせない限り、舟券判断を動かす材料にはならない。「本命艇 (1 コース) のモーターが 40% 超」と「本命艇のモーターが 35% だが選手 A1 級・スタート抜群」を比べたら、後者のほうがほぼ確実に強い
  2. 45% 超を「絶対本命」扱いするな ─ 45% 以上はサンプルが相対的に薄くなり (全国データでも該当 N は 1 万〜9 万件規模)、階層単位のブレが大きくなりやすい。全国データでは明確な頭打ちや逆転は確認されなかったが、「45% 超を見たから鉄板」と思い込むのも根拠としては薄い
  3. 逆に「6 号艇 × 40% 超」のような相対インパクトは妙味候補 ─ 6 号艇の全国平均 1 着率 3.66% に対して、40% 超では 4.64% (+0.98pp、相対 +27%)。絶対勝率は低いままだが、3 連単の穴目に紛れ込ませる材料としては考慮の余地あり (別途検証推奨)
  4. 連続変数 (連続的な値) として、他要素と「足し算」で使う ─ 「33% < 38% < 43%」という勾配のシグナルとして、選手・コース・展示・風速・スタートタイミングの加重合計に小さな重み係数で組み込む。これが BOATCRAFT v10 以降の予測モデルの方針

BOATCRAFT のアプリは、モーター 2 連率を 閾値ではなく連続変数 (連続的な値) として、選手成績・コース有利・展示タイム・会場別クセと合成した予測モデルで処理している。「モーター 40% 超のフラグ」だけを見るのではなく、すべての要素を統合した期待値で勝負する設計。23 つまみ でモーター重視 / コース重視 / 選手重視のバランスを自分用にチューニングできる。

データ品質に関する注記 (2026-07-08 更新)

本記事の結論を正しく読むために、データの制約を明記する:

誠実に言えば、本記事は「2018 年以降・全国 24 会場の約 200 万エントリーで、モーター 40% 神話は部分的真実だった」と読むのが正確。1999-2017 年まで遡った完全な 27 年間・全国規模での一般化は、当時のデータ収集範囲の制約上できない。「40% で線が引けない」「閾値より勾配」「45% 以上もほぼ横ばい (旧稿の逆転は再現されず)」という結論は、200 万件・全 24 会場という大規模かつ地理的に偏りの小さいサンプルで確証されたものとして読んでよい。ただし会場別・級別に分解すると効果の大きさにはばらつきがあり、「全国どこでも・誰でも同じだけ効く」という意味ではない。

検証データ: 2018-01-01 〜 2026-06-30、約 200 万エントリー (BOATCRAFT データベース、モーター 2 連率の記録あり、全国 24 会場) / 統計テスト: 2 つの勝率を比べる方法 (z 検定、両側) + 差の実用的な大きさを示す指標 (効果量 Cohen's h) / 初出: 2026-05-28 / 最終更新: 2026-07-08 (全国データで再検証・一部訂正)

▶ 続編:では「レースで一番いいモーター」なら、成績は本当に伸びるのか? 競艇 エースモーターは買いか ─ 最強機でも1着率2割、モーターが効く競艇場 で、エース機の実力と会場差を検証しています。

40% は閾値じゃない連続変数として使え

「40% 超だから本命」も「39% だから消し」も、+1 〜 2 ポイントの差で判断するには弱すぎる。モーター 2 連率は閾値ではなく勾配のシグナル ── これがデータの結論。BOATCRAFT は モーター × 選手 × コース × 展示 を統合した予測モデルで、すべての要素を加重合計の連続変数として処理。23 つまみ でモーター重視 / コース重視 / 選手重視のバランスを自分用にチューニング可能。

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