— この記事の要点 —

全国24場・2022年以降、同一会場×同一モーター番号の月次成績を追跡(n=72,731ペア)。ある月とその翌月の2連対率の相関係数は0.119とごく弱い。特に「上位10%のエース機」だけを追うと、その月の平均2連対率60.5%が翌月には35.9%まで落ち、全モーターの平均(32.6%)にほぼ戻ることが分かった。ただし完全にゼロでもない──ランダムなら翌月も上位30%に残る確率は理論上約30%のところ、実際は37.9%とやや高い。「先月当たってた」は無意味ではないが、思われているほど強い根拠にもならない。

01大村のモーター31号、5月は10走8勝(2連対率100%)だった

2026年5月、大村競艇場のモーター31号は10走して8回、2着以内に入った。2連対率にして100%(実際は端数処理前で完全ではないが、ほぼ全勝に近い数字)。現場で「今月の当たりモーター」と呼ばれるにふさわしい成績だ。

ではその翌月、同じモーター31号はどうなったか。6月は12走して2連対はわずか1回、2連対率にして8%まで落ちた。

他にも似た例: 若松のモーター48号(2024年1月・9走で2連対率89%→翌月12走で0%)、福岡のモーター17号(2026年2月・10走で2連対率100%→翌月8走で13%)。いずれも「先月の主役」が翌月には姿を消している。

これが単なる偶然の一例なのか、それとも構造的に起きていることなのかを、全国データで確認する。

02「当たり」を数字で定義する

「当たっているモーター」を、その月・その会場でのモーター番号ごとの2連対率(1着または2着に入った割合)と定義した。1ヶ月あたり6走以上あったモーター×会場の組み合わせだけを対象にし(サンプル不足による極端値を除外)、2022年1月以降のデータで「ある月の2連対率」と「その1ヶ月後の2連対率」のペアを作った。同一会場・同一モーター番号での前後月比較なので、モーターの積み替えや会場移動をまたぐ混同はない。

この方法で作れたペアは72,731組。27年DBの厚みがあるからこそ、この規模の「月またぎペア」を確保できる。

03全体で見ると、相関はごく弱い

指標
月またぎペア数72,731
ある月の平均2連対率32.9%
翌月の平均2連対率32.6%
2連対率の相関係数0.119

相関係数0.119は、統計の目安で言えば「ほとんど相関なし〜弱い相関」の領域。ある月の2連対率だけで翌月の2連対率を言い当てようとしても、ほぼ的中しないレベルだ。全モーターをひっくるめて見る限り、「先月の調子」は翌月の予測材料としてほぼ機能しない。

04「エース機」だけに絞ると何が起きるか

ただし全モーターを一緒くたにするのはフェアではない。現場で語られる「当たりモーター」は、平均的なモーターの話ではなく、その月にとりわけ調子が良かった一部の「エース機」を指しているはずだ。そこで、月ごとに2連対率が上位10%に入ったモーター(=エース機)だけを抜き出し、その翌月の成績を追跡した。

区分2連対率n
エース機だったその月60.5%7,366
その翌月35.9%7,366
(参考)全モーターの平均32.6%
60.5%だったエース機は、翌月には35.9%──
全体平均(32.6%)まで、ほぼ戻ってしまう

「先月2連対率60%超えだった」という強烈な当たりも、翌月にはほぼ平均並みに収束する。これは統計でいう「平均への回帰」そのものだ。極端に良い(悪い)結果は、次の観測では平均に近づきやすい──モーターの調子にも、この性質がそのまま当てはまっている。

05ゼロではない、が「思ったほど」でもない

ここで公平を期すために、「完全にランダムなら何が起きるはずか」という基準線も置く。仮にモーターの調子が月ごとに完全にシャッフルされる(=前月の成績と一切関係ない)なら、上位10%だったモーターが翌月も上位30%に入る確率は理論上10%×3=約30%、上位10%に居残る確率は約10%になるはずだ。

指標実測値完全ランダムなら
翌月も上位30%以内に残る割合37.9%約30%
翌月も上位10%以内に残る割合13.9%約10%

実測値はランダムの基準線より高い。つまり「モーターの調子にはある程度の地力の差があり、多少は翌月に持ち越される」というのも事実ではある。ただしその上乗せ分は、ランダムとの差で見ればわずか数ポイント。「エース機だから買い」と言い切れるほどの根拠にはならない、というのが数字の示す結論だ。

データが支持すること

  • モーターの調子には多少の「地力差」があり、完全ランダムより持続しやすい
  • 持続の効果は統計的には検出できる程度には存在する

データが支持しないこと

  • 「先月当たってた」=「今月も当たる」という強い言い切り
  • エース機の2連対率がそのまま翌月も続くという期待(平均まで戻るのが実際)

06lab-06(モーター神話)との違い

BOATCRAFTの検証ラボには、以前に「モーター2連率40%超は強い」という定説を扱った検証ラボ#06がある。混同されやすいので、問いの違いをはっきりさせておく。

前者は"ある時点の数字の意味"、後者は"時間を超えた持続性"を問うており、同じ「モーター」というテーマでも検証している構造が異なる。同様に「エースモーターは買いか」(lab-06番外編)は「そのレースで一番2連率が高い艇(=そのレース限りのエース機)が勝ちやすいか」というレース内の比較を検証したもの。本記事の「エース機」は月次集計で上位10%に入ったモーターを指し、問うているのは月をまたいだ持続性で、比較の軸が異なる。

07モーターつまみとの付き合い方

BOATCRAFTのモーターつまみは、選手が担当する「モーター2連率」という現時点の実績値を予想に反映する機能で、今回検証した「翌月への持ち越し」を織り込む設計にはなっていない(そもそも持ち越しの効果自体がランダムよりわずかに高い程度なので、織り込む効果は限定的と考えられる)。「先月の当たりモーターだから」という理由だけでモーターつまみを大きく上げるのではなく、あくまで直近の実績値を見て判断する──というつまみ本来の使い方が、今回のデータとも整合する。

データに関する注記

結論

  1. 全国24場・7.3万モーター×月ペアで見ると、月をまたいだ2連対率の相関はわずか0.119
  2. 「上位10%のエース機」でも、翌月には全体平均(32.6%)近くまで戻る(60.5%→35.9%)
  3. ただし完全にランダムでもない──翌月も上位に残る割合はランダム予測よりやや高い
  4. 「先月当たってたから」を強い買い目根拠にするのは、データ上は支持されない
— 注意 —
傾向は「平均」であり、個々のレースは水面・風・メンバーで大きく変わる。本記事は傾向の解説であって、的中や利益を保証するものではない。舟券は20歳以上・余裕資金で。

「今」を見るか、「先月」を見るか。

モーターの調子は毎月ほぼリセットされる──だからこそAIエンジン「テトラ」は27年・約880万件のデータから、直近の実績を毎回ゼロから計算し直す。23のつまみで自分の狙いに合わせて予想できる。

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