— この記事の要点 —

①(1号艇)=いちばん内から出る本命艇。1999年〜の約118万レースで「①が1着を逃した時、誰が1着になったか」を再集計した。直近5年、①が勝つのは54.7%、負けるのは45.3%。ところがその負けのうち約58%は①が2〜3着に残っており、①が完全に着外へ消えるのは全レースの約19%だけ。①が1着を逃した時に浮上する艇は②30.9%→③27.6%→④22.1%→⑤12.6%→⑥6.8%と、きれいに内から外へ(この差は偶然では説明できない水準、z=85.0, p<0.0001)。そして実際の3連単は「②③が1着、①が2着」の型が最も多い。さらに深掘りすると、この"内寄り"の浮上パターンは27年で年々強まっており(②が⑥の何倍浮上しやすいかは1.76倍→4.54倍に拡大)、会場差も大きい(隣接艇の浮上率は福岡67.2%〜桐生53.2%、z=14.8)。①は飛んでも2着に残りやすい——それが27年の答えだった。

問い ── 「①が飛んだら荒れる」は本当か

まず言葉を揃える。本記事の①=1号艇(スタートで最も内側の枠から出る艇)だ。競艇では最も有利で、"本命"の代名詞。ファンの間ではこう言われる ── 「①は堅い。でも一度飛ぶと荒れる」。この"飛んだら荒れる"を、実データで解剖する。①が1着を逃したとき、①自身はどこまで沈むのか。そして代わりにどの号艇が1着を奪うのか。

検証方法

前提 ── 「①は堅い」は"最近の常識"だった

意外に知られていないが、①の強さは時代とともに激変している。27年をならすと①の1着率は約41%だが、年代で切ると別世界だ。

年代①(1号艇)の1着率
1999〜200423.4%
2005〜201027.9%
2011〜201540.5%
2016〜202052.3%
2021〜202654.7%
統計メモ:1999〜2004年(n=217,893, 23.36%)と2021〜2026年(n=305,460, 54.70%)の①1着率の差は、偶然では説明できない水準(2標本比率検定でz=226.7, p<0.0001)。「①は堅い」という体感は、27年のうちに作られた比較的新しい常識だ。

1999年は23%、今は55%。25年で①の1着率は2倍以上に伸びた。ボート・モーターの整備規則やスタート展示の整備で「イン有利」が年々強まった結果だ(→検証ラボ #13 イン率の歴史)。だから「①が飛ぶ」の"重み"も今と昔では違う。以下は直近5年(2021〜)を主役に見ていく。

結論① ── ①は負けても"消えない"

直近5年、①(1号艇)自身の着順分布はこうだ。

①の着順割合(全レース中)
1着(逃げ切り)54.7%
2着17.4%
3着9.0%
4着7.0%
5着5.9%
6着4.8%
着外(失格・転覆等)1.2%

①が1着を取るのは54.7%。逃すのは45.3%。ここまでは当たり前。だが注目は負けた時の①の居場所だ。①が1着を逃したレースのうち、約38%は①が2着、さらに約20%は3着。合わせて約58%は、①は負けても2〜3着に残っている。①が本当に着外へ消えるのは、全レースのわずか約19%にすぎない。

統計メモ:直近5年(2021-07-09〜2026-07-08)の①出走275,578レース中、1着を逃した124,724レースのうち72,637レース(58.24%)は①が2〜3着に残った。①が4着以下・失格・転覆等まで沈んだのは52,087レースで、全体(275,578レース)の18.9%にあたる。

結論② ── 浮上は「内から外へ、順番に」

本題だ。①が1着を逃したとき、代わりに1着を奪ったのはどの号艇か(直近5年)。

① が1着を逃した時、代わりに1着になった号艇(直近5年)
30.9%
27.6%
22.1%
12.6%
6.8%
統計メモ:直近5年・①が1着を逃した124,720レース中、②③(隣接2艇、合計58.51%)と④⑤⑥(外側3艇、合計41.49%)の差は偶然では説明できない水準(同一母集団内の2標本比率検定でz=85.0, p<0.0001)。最多の②(30.89%)と最少の⑥(6.81%)の差はさらに大きい(z=153.7, p<0.0001)。

きれいな階段だ。②が約31%で最多、続いて③28%・④22%。②③だけで約6割を占める。⑤⑥の出番は合わせて2割弱しかない。①が飛んでも、浮上するのは"隣から順番"で、いきなり大外が突き抜けるわけではない。この傾向は27年通しでもほぼ同じ(②28.6%→③24.6%→④21.2%→⑤14.5%→⑥11.1%)で、時代を超えて安定している。ただし、この"内寄り"の度合い自体は年々強まっている ── その詳細は後述する。

結論③ ── ①が負けた時に多いのは【②③が1着・①が2着】

①が1着を逃したレースで、実際に最も多く出た3連単の型がこれだ(27年集計・①が1着を逃した全レース中)。

3連単の型読み方出現率
2 - 1 - 3②頭・①2着・③3着3.2%
2 - 1 - 4②頭・①2着・④3着2.9%
3 - 1 - 4③頭・①2着・④3着2.3%
2 - 1 - 5②頭・①2着・⑤3着2.3%
3 - 1 - 2③頭・①2着・②3着1.9%
2 - 1 - 6②頭・①2着・⑥3着1.9%
3 - 1 - 5③頭・①2着・⑤3着1.9%
2 - 3 - 1②頭・③2着・①3着1.8%
2 - 3 - 4②頭・③2着・④3着1.7%
統計メモ:27年・①が1着を逃した693,344レース中(2〜3着の記録がある母数)で集計。上位7型はすべて「②か③が1着・①が2着」の組み合わせで、8位以降で初めて①が3着まで下がる型(2-3-1、2-3-4)が登場する。①が2着にすら残れない型は、上位に一つも入っていない。

一目瞭然 ── 上位はほぼ「2-①-X」「3-①-X」。つまり②か③が1着、①はすぐ後ろの2着。①が飛ぶ=①を消す、ではない。①は2着に残りながら、1着だけ②③に入れ替わるのが、データが示す傾向だ。「②が1着・③が2着・①が3着」という、①がさらに一段落ちる型もあるにはあるが、出現率は1.8%と一段低い。

では"本当に①が消えた"時は?

①が着外に沈んだ(3着以内に絡めなかった)レースだけを抜き出すと、1着は②27.6%→③28.1%→④24.4%→⑤12.8%→⑥7.1%と、やはり内側が優勢だった。「①が完全に飛んだ=大外の大穴」というイメージも、実は幻想に近い。荒れても、まず疑うのは②③、次いで④。⑤⑥の一撃はあくまで例外だ。

統計メモ:ただしこの部分集合(n=52,083)では②(27.59%)と③(28.10%)の差は統計的に有意ではない(z=-1.84, p=0.066)。①が2〜3着に残る「通常の負け方」では②が明確に最多だったが、①が完全に沈む「本当の大荒れ」まで条件を絞ると、②と③はほぼ互角になる。②③合計(55.7%)が④⑤⑥合計(44.3%)を上回る構図そのものは変わらない。

I.時代とともに、浮上の主役はより"内寄り"になった

前提で見た通り、①自身の1着率は27年で23%台から55%台へと大きく伸びた。では①が飛んだ時に浮上する艇の顔ぶれも、同じように"内寄り"へ変わってきたのだろうか。①の1着率がまだ低かった1999〜2010年と、直近5年(2021〜2026年)を、同じ「①が1着を逃した時の浮上艇」という切り口で比べてみる。

期間
1999〜2010年25.8%22.6%20.3%16.6%14.7%
2021〜2026年30.9%27.6%22.1%12.6%6.8%
統計メモ:1999〜2010年(n=330,192)と2021〜2026年(n=124,720)を比較する2標本比率検定の結果、②(25.76%→30.89%, z=34.7)・③(22.60%→27.62%, z=35.4)・④(20.26%→22.11%, z=13.7)は増加、⑤(16.64%→12.57%, z=33.8)・⑥(14.73%→6.81%, z=71.9)は減少。いずれもp<0.0001で偶然とは考えにくい。

方向は一貫している。②③④は割合を増やし、⑤⑥は減らした。中でも⑥の下げ幅が大きく、14.7%→6.8%とほぼ半分になっている。「②は⑥の何倍浮上しやすいか」という比率で見ると、1999〜2010年は1.76倍だったのが、直近5年では4.54倍まで開いた。①自身が強くなったのと同じ27年間で、①が飛んだ後の"次点争い"もまた、内側に寄っていったことになる。

"浮上は内から順番に"は、昔から変わらぬ法則ではない。
①が強くなった27年間で、この傾向自体が年々強まってきた

II.会場によって、浮上のパターンは変わるのか

この"内寄り"の傾向は、全国どの会場でも同じ強さで出ているのか。直近5年、①が1着を逃したレースを24会場別に集計し、隣接する②③が浮上する割合(=②+③の合計)を会場ごとに比べた。

会場N②+③(隣接)
福岡5,04733.9%33.3%19.6%8.6%4.5%67.2%
三国5,31033.1%30.0%19.5%10.5%6.9%63.2%
徳山4,36036.4%25.6%20.6%11.0%6.4%62.0%
住之江4,91433.2%27.3%21.4%11.9%6.2%60.5%
4,75933.6%26.8%21.4%12.1%6.1%60.4%
大村4,54232.1%28.3%21.5%11.7%6.4%60.4%
江戸川5,68533.4%26.5%22.4%12.5%5.2%60.0%
びわこ5,08931.6%28.3%22.2%12.9%5.0%59.9%
唐津5,24032.2%27.2%21.9%12.6%6.1%59.4%
浜名湖5,84530.4%28.5%19.7%13.1%8.2%58.9%
丸亀5,06631.4%27.3%21.8%12.6%6.9%58.7%
鳴門5,73129.6%28.6%22.1%13.4%6.3%58.2%
多摩川5,44532.2%26.0%23.0%12.6%6.2%58.2%
尼崎4,60729.2%28.9%22.6%12.8%6.5%58.1%
児島5,11430.3%27.8%22.0%12.6%7.3%58.1%
宮島5,19330.0%27.8%21.7%13.5%7.0%57.8%
戸田6,63329.1%28.3%23.7%12.3%6.5%57.4%
平和島5,92231.0%25.6%21.8%13.5%8.1%56.7%
下関4,53429.9%26.5%22.7%12.3%8.5%56.4%
若松4,99728.5%27.6%22.5%12.9%8.5%56.1%
芦屋4,56128.0%27.5%23.9%13.2%7.5%55.5%
蒲郡5,26228.2%27.2%24.6%13.0%7.0%55.4%
常滑5,17828.5%25.5%23.3%14.1%8.7%54.0%
桐生5,68627.0%26.2%24.2%15.2%7.4%53.2%

※①が1着を逃したレースにおける1着艇の内訳(%)。直近5年(2021-07-09〜2026-07-08)。

統計メモ:隣接(②+③)の割合が最も高い福岡(n=5,047, 67.21%)と最も低い桐生(n=5,686, 53.20%)の差は、偶然では説明できない水準(z=14.8, p<0.0001)。会場によって"内寄り"の強さは統計的にも確実に異なる。

最も"内寄り"が強いのは福岡(67.2%)で、②③どちらか一方に極端に偏らず、②33.9%・③33.3%とほぼ同格で浮上している。逆に最も緩やかなのは桐生(53.2%)で、④が24.2%・⑤が15.2%と、他の会場より外側の艇にも浮上のチャンスが回っている。桐生は風の影響を受けやすい内陸水面として知られ、隊列が乱れやすいことと関係している可能性がある。なお、この"浮上の内寄り度"のランキングは、検証ラボ #16 の会場別の固さ(①自身の1着率)とは必ずしも一致しない。たとえば芦屋は固さでは上位だったが、浮上の内寄り度では中位以下(55.5%・24会場中21位)にとどまる。「①が来るかどうか」と「①が来なかった時に誰が来るか」は、別の軸で会場差が出るということだ。会場ごとの傾向は24会場ガイドにも詳しい。

傾向 ── ①が不安な回に見える浮上パターン

  1. ①は2〜3着に残りやすい:飛んでも2〜3着に残る確率が高く、①が完全に着外へ消えるのは27年データでも少数派
  2. 1着は②③に集中しやすい:①が1着を逃した回は②③号艇が1着になる傾向が強く、①はその後ろの2着に来やすい(ただし①が完全に沈んだ回に限ると②③の優劣差はほぼ消える)
  3. 大外の1着は少数派:①が消えても⑤⑥が1着になるケースは少なく、浮上はまず④までにとどまることが多い
  4. この傾向は時代・会場で強さが違う:"内寄り"の度合いは27年で強まっており、会場によっても福岡67%〜桐生53%まで差がある
— 注意:これは平均の話 —
全レースをならした傾向で、個々のレースは水面・風・メンバーで大きく変わる。①が大外に沈む大荒れも当然起きる。本記事は傾向の解説であって、的中や利益を保証するものではない。舟券は20歳以上・余裕資金で。

結論

  1. 「①は堅い」は最近の話 ── ①の1着率は1999年23%→直近55%へ、25年で2倍以上に伸びた(z=226.7で統計的に確実)。
  2. ①は負けても消えない ── 直近5年、①が1着を逃す45.3%のうち約58%は①が2〜3着に残る。着外は全体の約19%だけ。
  3. 浮上は内から順番 ── ①が飛んだ時の1着は②30.9%→③27.6%→④22.1%→⑤12.6%→⑥6.8%。②③で約6割、この差は統計的に確実(z=85.0)。
  4. 多いパターンは【②③が1着・①が2着】 ── ①はそのまま2着に残り、1着だけ②③に入れ替わるのがデータの答え。ただし①が完全に沈んだ場合に限ると、②と③の優劣は統計的に有意ではなくなる。
  5. "内寄り"傾向は27年で強まった ── ②が⑥の何倍浮上しやすいかで見ると、1999〜2010年の1.76倍から直近5年は4.54倍まで拡大した。
  6. 会場差もある ── 隣接艇(②③)の浮上割合は福岡67.2%〜桐生53.2%まで開き(z=14.8)、①自身の固さ(検証ラボ #16)とは別の軸で会場差が出る。

データが言えること

  • ①が1着を逃した時、浮上する1着は②30.9%→③27.6%→④22.1%→⑤12.6%→⑥6.8%と内から順(z=85.0、p<0.0001)
  • ①が1着を逃しても、その58.2%は①自身が2〜3着に残る(完全に着外へ消えるのは全体の18.9%)
  • "内寄り"の傾向は27年で統計的に確実に強まった(②/⑥倍率が1.76倍→4.54倍、各艇ともp<0.0001)
  • 会場差も統計的に確実(隣接②③の浮上割合が福岡67.2%〜桐生53.2%、z=14.8)

言いすぎ注意

  • ①が完全に沈んだ場合に限ると、②と③の優劣差は統計的に有意ではない(z=-1.84, p=0.066)
  • 本記事は艇番(枠番)ベースの集計。前づけ等でコースが艇番と異なる回は反映していない
  • 傾向は「平均」であり、個別レースは水面・風・メンバー構成で大きく変わる
  • 的中や利益を保証するものではなく、傾向の解説にとどまる
①が飛ぶ、は"消える"ではない。
差されて2着に残り、隣が繰り上がるだけだ。

データに関する注記

検証データ:1999-04-30〜2026-07-09・全国24場 1,178,869レース(BOATCRAFTデータベース)/ 集計指標:①の年代別1着率・①の着順分布・①が1着を逃した時の浮上艇と3連単型・会場別クロス集計 / 統計検定:2標本比率検定(z検定)/ 初出:2026.07.06 / 再集計・深掘り:2026.07.09(統計検定・時代比較・会場別クロス集計を追加、DB更新により数値を最新化)

その①、飛ぶか、残るか。

①が本当に飛びそうな回か、それとも2着に残る回か ── AIエンジン「テトラ」が27年・約880万件のデータから毎レースの着順確率を計算。「荒れる/堅い」のイメージに流されず、23のつまみで自分の狙いに合わせて予想できる。

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