— この記事の要点 —

競艇の①(1号艇)は直近5年で1着率55.4%(BOATCRAFTデータベース・27万走)。競輪の先頭は全体で1着率21.0%(KEIRINCRAFTデータベース・男子競輪28.7万走)。だがこの2つを単純に並べて「①の方が強い」と言うのは早計だ。①の有利さは会場が変わっても33.6%〜50.1%の範囲に収まる比較的安定したものだが、競輪の先頭の有利さはライン(隊列)の人数によって単騎6.8%から7人ライン95.5%まで激しく変動する。しかも単騎(仲間なし)の先頭は、7車立てなら"フェアな取り分"である14.3%さえ下回る。競輪の「先頭」は仲間がいて初めて有利になる位置であり、位置そのものが有利なわけではない。同じ「有利な位置」という言葉の中に、性質の異なる2つの現象が隠れている。

問い ── なぜ①と先頭を並べるのか

yutakacraftは競艇のBOATCRAFT、オートレースのAUTOCRAFT、競輪のKEIRINCRAFTという3つのAI予想アプリを、それぞれ独自のデータベースで運営している。3競技を同時に見ていると、ある共通点に気づく。どの競技にも「まず疑うべき有利な位置」が存在する。競艇なら内側の①、競輪ならライン(隊列)の先頭だ。だが、この2つを同じものとして語ってよいのか。本記事では優劣を決めるためでなく、「有利」という言葉が競技ごとにどう違う中身を持つのかを、実データで観察する。

検証方法

競艇の①(1号艇) ── 位置そのものが持つ有利さ

競艇は6艇が横一線でスタートし、最初のターンマークまでの距離が艇番ごとに違う。①(1号艇)は最も内側、つまり物理的に最短距離を走れる位置だ。直近5年のBOATCRAFTデータベースでは、①の成績はこうなる。

指標直近5年(2021〜)27年全期間
1着率55.4%41.5%
2連対率(1〜2着)73.0%60.0%
3連対率(1〜3着)82.1%71.9%
統計メモ:直近5年の①出走272,539件、全期間(1999-04-30〜)の①出走1,161,219件で集計(BOATCRAFTデータベース)。①の1着率が27年間で41.5%→55.4%へ伸びている背景は検証ラボ #13で別途検証済み。

①の有利さの本質は、その艇に誰が乗っていても位置そのものが持つ有利さだという点にある。同じレースの中で他の艇がどんな選手構成であっても、①というポジション自体の優位は大きく揺らがない。会場によって①の強さは変わるが(検証ラボ #10)、それはコースの水面特性の違いであって、「①が誰と一緒に走っているか」で有利さが変わるわけではない。

競輪の先頭 ── 関係性の中で強さが変わる有利さ

競輪には「ライン」という、選手同士が事前の関係性(所属地区や師弟関係など)をもとに形成する隊列がある。ラインの先頭に立つ選手は、後ろの選手たちに風よけをしてもらいながら位置を守り、終盤で自らのライン内の仲間に競走を組み立ててもらう。KEIRINCRAFTデータベース(2021年〜、男子競輪・finishedレース137,657走)で、ライン内の位置別成績を見るとこうなる。

ライン内の位置n1着率2連対率3連対率
先頭286,65821.0%36.2%48.1%
番手286,65815.0%32.8%46.5%
単騎72,4436.8%14.3%26.0%
3番手130,2282.6%10.5%31.7%
4番手以降14,5961.1%4.8%16.4%

「先頭」は確かに他のどの位置より1着率が高い。しかしこの"先頭"というくくりの中に、単騎(仲間なし)からライン人数の多い先頭まで、まったく違う条件が混ざっている。ライン人数別に先頭選手の成績を出し直すと、その違いがはっきり現れる。

ライン人数n1着率2連対率3連対率
1人(単騎)72,4436.8%14.3%26.0%
2人156,43015.2%27.4%39.3%
3人117,09025.8%44.5%56.7%
4人11,88544.4%65.6%76.2%
5人1,07067.8%85.4%90.9%
6人 ※参考値16182.6%95.7%96.9%
7人 ※参考値2295.5%95.5%95.5%
統計メモ:KEIRINCRAFTデータベース、2021-06-22〜2026-07-13のfinishedレース137,657走(ガールズ競輪はライン戦をしないため除外・男子競輪のみ)。6人・7人ラインはサンプル数が少なく(161件・22件)、参考値として扱う。

単騎(仲間なし)の先頭は1着率6.8%。7車立てなら数字の上での"フェアな取り分"は1/7=14.3%だから、単騎の先頭はむしろそれを下回っている。仲間の風よけがない先頭は、他の選手に楽をさせているだけの不利な位置ですらある。そこから2人・3人とラインが育つごとに数字は跳ね上がり、4人ラインで44.4%、5人ラインでは67.8%に達する。同じ「先頭」という言葉が、仲間の数だけでまったく別の位置に変わる。この"何人で作っているか"による強さの変動は、①には存在しない性質だ。

観察 ── 「固定された有利さ」と「可変の有利さ」

①も先頭も「有利な位置」には違いない。しかし、その有利さがどこから来るかを比べると、構造がまったく違うことが見えてくる。

競艇の① ── 位置に固定

  • 物理的に最短距離を走れる、レース開始時点で決まっている位置の有利さ
  • 同乗する他艇の選手構成によって有利さの大きさが変わることは(会場差を除けば)比較的少ない
  • 誰が①に入るかは選手本人の"その日の位置"の話であり、他の選手との関係性を必要としない

競輪の先頭 ── 関係に依存

  • 他の選手との事前の関係性(ライン形成)によって初めて生まれる有利さ
  • ラインの人数によって強さの大きさそのものが変わる(単騎と大ラインでは別物)
  • 先頭を務める選手は、後ろの選手たちの協力があって初めてその有利さを活かせる

言い換えると、①の有利さは「くじ引きに近い、位置の物理学」であり、先頭の有利さは「交渉と信頼で作る、関係の力学」だ。同じ「有利な位置」という言葉を使っていても、BOATCRAFTが①を読むときと、KEIRINCRAFTが先頭・ライン構成を読むときとでは、AIエンジン「テトラ」が見ている"何が効いているか"の中身が根本的に異なる。BOATCRAFTのテトラは位置と単艇の要素を、KEIRINCRAFTのテトラはライン構造(検証ラボ #07)という関係性の要素を、それぞれ重く見ている。

同じ「有利」でも、中身は違う。
①は位置の物理学、先頭は関係の力学

データに関する注記

結論

  1. ①の1着率は直近5年で55.4%(BOATCRAFTデータベース27万走)。位置そのものに固定された有利さで、周囲の選手構成による変動は比較的小さい。
  2. 競輪の先頭は、ラインの人数で別の位置になる(KEIRINCRAFTデータベース28.7万走)。単騎6.8%→2人15.2%→3人25.8%→4人44.4%→5人67.8%と単調に上昇し、単騎は7車立ての"フェアな取り分"14.3%すら下回る。関係性に依存する可変の有利さ。
  3. 同じ「有利」でも中身は別物。①は位置の物理学、先頭は関係の力学。優劣でなく、構造の違いとして捉えるべき現象。
  4. この違いは両アプリのAIエンジン「テトラ」が見ている特徴量にも表れている。BOATCRAFTは位置・単艇要素、KEIRINCRAFTはライン構造という関係性要素を重視する。
— 注意 —
本記事は競技構造の違いを観察するものであり、どちらの競技・アプリが優れているかを主張するものではない。数字は集計期間・条件により変動する。的中や利益を保証するものではなく、投票は20歳以上・自己責任で。

「有利」の中身を、自分の目で確かめる。

①の位置の強さも、先頭ラインの関係の強さも、それぞれのAIエンジン「テトラ」が数字で見せてくれる。

BOATCRAFT(競艇)

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KEIRINCRAFT(競輪)

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